おはようございます!先週まではオーストラリアワインを飲みながら、ワインの価格差について、ワイナリーの哲学や流通経路の違いから2回にわたって深掘りしてきました。(ワインの価格差とは?前編、後編)
今日からは南半球からはるばると北半球に飛んで、今週はオーストリアワインの魅力に迫ります🇦🇹
私にとってオーストリアといえば、音楽の都というイメージ。ウィーンやザルツブルクなど、クラシック音楽好きにはたまらない場所がたくさん。
オーストリアワインを勉強するにあたって、座学→ワインショップといういつものルートを辿ろうと思っていたのですが、「プロの人と飲む機会をつくったらどうか」という提案があったので早速、名古屋のホイリゲ ハウディで勉強してみよう🏃♀️と思いお店へGO。するとちょうどその日はオーストリアのワイナリー「フレッド・ロイマー」さんの試飲会イベントの開催日でした。
そこで出会ったオレンジワインのレポートを書く前に、オーストリアのワイン事情について少し触れてみたいと思います。
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オーストリアで生産されるワインは、白ワインが70%。この割合どこかで見覚えがあるなと思い、過去記事を振り返ると、アルゼンチンでは70%が赤ワイン、ウルグアイでは80%が赤ワインでした🍷ほぼ真逆で面白い。
アルゼンチンやウルグアイで赤ワインが盛んな理由は、ブドウが育つ気候やその国の食文化が影響していることがわかりました。
オーストリアについても、同じでしょうか?
■気候について
やはり気候は大きな影響を与えているようです。
オーストリアの主要ワイン産地は国土の東側、アルプス山脈の東麓に広がっています。ここでは、ハンガリー方面から吹き込むパンノニア平原の温暖で乾燥した空気と、西のアルプスから流れ込む冷涼な風、さらには北からの冷たい空気が交錯し、昼夜の寒暖差が大きく、年間を通じて降水量が少ないという独特の気候が生まれます。
この気候条件は白ブドウがゆっくりと成熟し、フレッシュな酸味と豊かなアロマを持つ白ブドウ品種の栽培に理想的。(下の地図のオーストリア国旗のマークがついている4地方がブドウの生産地)
日中の日照と暖かさによって、ブドウは光合成を活発に行い糖度を高めていきます。その際ブドウの中にあるリンゴ酸が、ブドウ内で呼吸作用(代謝プロセス)の一環として分解されます。このプロセスは高温の中だと加速します。(暑い中でマラソンをしたら、カロリーをたくさん使うそんなイメージでしょうか。)
一方、夜間は冷え込むことで、ブドウ内のリンゴ酸の分解が抑制されるのです。この「昼に糖を蓄え、夜にリンゴ酸を保持する」サイクルが、白ワインに求められる生き生きとした酸と豊かな果実味のバランスを実現するのです。
特にグリューナー・ヴェルトリーナーは、オーストリア全体のブドウ栽培面積の約3分の1を占め、白ワイン用ブドウとして圧倒的な存在感を誇ります。主要産地であるニーダーエスタライヒ州では、州全体の47%がこの品種で占められるんだとか。このような単一品種の集中度は、他国の有名品種と比較しても非常に高い数値です。
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・グリューナー・ヴェルトリーナー(32.6%)at オーストリア
・マルベック(22.39%)at アルゼンチン
・シュナン・ブラン(18.4%)at 南アフリカ
・リースリング(24.1%)at ドイツ
・ソーヴィニヨン・ブラン(66%)at ニュージーランド
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■食文化について
引用元:https://www.wien.info/ja
白ワインが親しまれる背景に、独自の食文化も関係しています。
それは「ホイリゲ」と呼ばれる伝統的な習慣。ワイン農家がその年の新酒を自宅や庭先でふるまい、地元の人々が気軽に集まって楽しみます。ここで提供されるのは、できたてのフレッシュな白ワインが中心。なぜ白ワインなのかというと、白ワインの方が生産量が多いこと、そして新酒としての爽やかさや飲みやすさが社交の場にぴったりと合うとされてきたから。
ウィーンを中心としたホイリゲでは、伝統的にゲミシュター・サッツ(複数の白ブドウ品種を混植・混醸する手法)で造られる辛口の白ワインが新酒として親しまれています。この白ワインは微発泡でフルーティー、酸味が高く、軽やかな飲み口が特徴で、ジョッキで気軽に楽しむスタイルが定着。
また、ホイリゲはもともと食事と一緒に楽しむためのワインとして発展してきたため、ハムやサラダ、ピクルスなどのシンプルな料理と相性が良い白ワインが自然と主役になっています。このような背景から、ホイリゲではフレッシュな白ワインが中心となっているのです。
ちなみにこのホイリゲは、毎年11月11日の「聖マルティンの日」に解禁され、そこから1年間「ホイリゲ」として楽しむことができます。(実際には8月中旬から10月ごろに新酒が出回り始めるようですが、正式な解禁日は11月11日)
なぜ「聖マルティンの日」なのかというと、聖マルティンはワイン造りやブドウ栽培の守護聖人とされ、彼の伝説やブドウ栽培への貢献がオーストリアのワイン文化と結びついているから。また、秋の収穫と冬の始まりを祝う日としても重要視され、オーストリアではこの日に新酒のワインを開けて出来を確かめ、ガチョウ料理などと一緒に楽しむ習慣が根付いているんだそう。
このように文化として昔から根付いていること、そして気候条件も追い風となり、オーストリアでの白ワインは発展してきたようです。
ではグリューナー・ヴェルトリーナーはどんなブドウなのか?それについては次週以降に触れていきたいと思います🍇
今週はロイマーさんの試飲会でゲットしたワインのレポートで締めていきます。
■今週のテイスティングレポート
ゲミシュター・サッツ・ミット・アハトゥング 2020 | フレッド・ロイマー
ロイマーさんのワイナリーが位置するのは、ニーダーエスタライヒ州。オーストリアで最もワインの生産が盛んな地域です。
ロイマーさんが目指しているワインは、「ブドウの生理学的成熟を重視し、ブドウ本来のアロマに満ちた、テロワールの特徴を最大限に引き出したワイン」。
ブドウはかつては同じ土地にいろんなものが植わっていた、とロイマーさん。なかなかイメージがつきませんでしたが、野原にいろんな草花が植わっていることを想像すると納得が行きます。
時代が進み、人の手が加わり綺麗に整地された場所でのブドウ栽培が行われることが増えた現代において、ロイマーさんはなるべく昔ながらのブドウ栽培の風景を大事にしています。それはブドウだけでなく、家畜を飼ったり、野菜が植わっていたり、そういう周りの環境もできるだけ自然のままにこだわっているのです。
試飲会では、さまざまなヴィンテージのワインがあり、その違いについてロイマーさんに尋ねるチャンスがありました。
するとロイマーさんは、「ブドウはワインになった時には複雑さを増して、元のブドウの姿からは変わってしまう。しかし熟成を経ていくことで、最終的には元のブドウの良さが残っていくんだよ」と話してくれました。
ワインは熟成すればいいものではない、という意見もある中で、ブドウの個性を大切にし、こだわりと愛を持って向き合っているロイマーさんだからこその言葉に、うっとり。
そんなロイマーさんが醸したワインのテイスティングをしていきます。グリューナー・ヴェルトリーナーを筆頭に、全て手摘みで収穫された8種類ものブドウがブレンドされています。すべてカンプタールというエリアで育ったブドウたち。テロワールにこだわるロイマーさんだからこそ完成されたワイン。(ワインの詳細については、日本グランドシャンパーニュさんの説明をご参考ください)
・外観:やや濁った薄めのオレンジ色(公式にはストローイエロー色、というらしい)。足がゆっくり垂れていたので、粘性は強めと判断。
・香り:ウッディーで木のような香り。熟れたりんご、燻製っぽさ、ちょっとお酢のようなニュアンスも。
・味わい:若干とろっとした印象。アタックは強くもなく弱くもなく、まろやか。酸味はあまり感じず、旨みや苦みがずっしりと舌の奥に残ります。後味には、甘いマスカットのような風味がしっかり残って多幸感でいっぱいに。ワインの名前に「Achtung」というドイツ語がありますが、これには飲み過ぎ注意という意味が含まれているんだと聞いて納得。何杯でも飲めてしまいますよ!
・価格:5,060円(税込)/750ml
今回の学びとしては、事前に生産者さんのことを調べてあらかじめ問いを携えた上で、生産者さんのイベントに参加する大切さです✍️問いを持たずして学びの場に参加しても、結局表面的なことしか聞けないからです🦻もっとこれもあれも聞きたかったな、という想いが溢れているので、また別の機会があればたくさん質問してみたいと思います。
ハウディさん、素敵な機会をありがとうございました!