全ての始まりは、一枚のTシャツでした。
バンドの裏方時代、多忙でどうしてもお酒が飲めなかった木下了太さん。「酒飲みてえ!」というあまりにピュアな願望をTシャツにして仲間に配ったところ、これがまさかの大反響。2017年、アパレルブランド〈CLUB SAKENOMITAI〉が誕生しました。
しかし、了太さんが18歳の頃から抱き続けていた本当の夢は「自分の店を持つこと」。その夢が結実したのは2022年。ANTELOPEのミードでお馴染み、飲食店〈KINOSHITA〉をオープンさせます。

そこは、「誰もが気軽に立ち寄れる雰囲気でありながら、サービスのレベルは高く、ぶっ飛んでるけど、クール」そんな独特の空気が流れる場所。
リョータさんにとっての「愛」とは、一体どんな形をしているのでしょうか。
仲間が集った「あの家」を、そのまま店に

「お客さんの『美味しい』が、すぐにダイレクトに伝わってくる。そのシンプルな関係性が好きなんです」 そう語るリョータさんが、仕事をする上で原点としている風景があります。
それはコロナ禍、どこにも飲みに行けなかった時期のこと。 毎日のように仲間たちがリョータさんの家に集まり、夢を語り合った日々がありました。
「あの時、腹を割って話した関係値があるから、この店がある。あの家を、この場所にそのまま持ってきた感覚なんです」
かつて家で感じた温かい時間が、今、店という場所で再現される。 店に来てくれる仲間たちが楽しそうに過ごし、新しいお客さんがその輪に混ざっていく。その光景を見ることこそが、彼が仕事に「愛」を感じる瞬間なのです。
「ダサいことはしない」。永遠の家で刻む愛のルール
「愛がなかったら、何も始まらない。」 時間をかけて関係を深めていくことを何より大切にするリョータさん。たった一つ、シンプルなルールがあります。
それは、「ダサいことはしない」ということ。「ミードのような、まだ広く知られていないものを扱う僕らが、その魅力を説明できなかったらダサい」。作り手へのリスペクトを持ち、探求心を忘れず、常に最高にクールな状態でいること。それが彼の「仕事への愛」です。
その愛は、一枚板から特注したテーブルや、友人が作ったドライフラワーのライト、そしてかつての家から移設され、思い出のステッカーで埋め尽くされた冷蔵庫など、店の隅々にまで宿っています。
仲間やお客さんに最高の時間を届けるため、情熱を注ぎ続けるリョータさん。彼は自身の愛の形について、こう語ります。
「辞めるのは一瞬、続けることは一生。この店を、自分が死んでも誰かが続けてくれるくらい、ずっとやり続けること。それが僕にとっての愛です。」
実は、かつて仲間が集った家の名は「カーサ・エテルナ」。イタリア語で「永遠の家(Casa Eterna)」という意味でした。 続けることが愛だと語った彼が、図らずも名付けた「永遠の家」。これからも愛する仲間たちと、KINOSHITAの未来は続いていきます。