前回の記事で萎凋と酵素の関係について議論を進めてきました。
後半は、それがどのような地域性に影響して、味わいにどのような影響を与えるのか?というところ。
凍頂烏龍茶の味わいについて
香りとしてはゲラニオールやリナロール、ネロールなどが豊富なようでしっかりと花っぽい香りの要素が強い印象です。僕自身は少し甘みを感じたものや、別の地域の完熟した黄桃のような雰囲気を持ったものが多かった経験があります。ホップみたいですね。
一般的な烏龍茶も上記の香り成分が多いのも香りの面白いところではあります。主体の香りが一緒でも別の香り成分が少しでも異なると、香りのバランスが変わったりしますね。
単に香り成分が変わったから、だけではなく、「香りの閾値」が別の香り成分と混ざることで変化するという点も見逃せません。
例えば、凍頂烏龍茶にはラクトンのような甘い乳酸発酵系の匂いが出るときがありますが、これがきっかけになって別の青く爽やかな香り成分の閾値が変化して、突然香るようになったなどなど。
凍頂烏龍茶の作り方の流れ
茶摘み | 成熟した一芽二~三葉を手摘み |
萎凋 | 日光・室内で水分を飛ばし香りを引き出す |
揺青 | 茶葉を揺すり攪拌し、発酵を促進 |
炒青 | 高温で炒り、発酵を止める |
揉捻 | 圧力をかけて揉み、半球状に丸める |
乾燥 | 水分を飛ばして荒茶に仕上げる |
焙煎 |
何度か焙煎し、香味を整え、保存性を高める |
上記が凍頂烏龍茶の作り方の一例。
萎凋をさせたあとに、揺青という茶葉全体の水分をならしつつも、軽く茶葉に傷をつけて酵素反応を微量に進める技術がおもしろいですね。
凍頂烏龍茶を作る地域の特徴
台湾中部・南投県鹿谷郷の「凍頂山」周辺で主に生産されています。標高600~1200mの山間部、複雑な地形、温暖で湿潤な気候、豊富な霧と肥沃な土壌という、茶葉栽培に理想的な自然環境に恵まれているようですね。
この地域の特徴は「昼夜の寒暖差が大きいこと」「霧の発生が多いこと」。
香り成分は日中の光によるストレスで発生したり、虫の被害によって発生したりするがそれらは夜間中に代謝されてしまうことも多い。しかし、夜間の気温がしっかりさがるとそれらの代謝がゆっくりになり、結果的に香り成分が茶葉に残りやすくなる。これが銘醸地なる所以の一つ。
お茶に含まれるアミノ酸(テアニンなど)は光による防御反応としてポリフェノールを生成するのに利用されカテキンになるルートがあります。そのため、霧の発生が多いことは光を遮ることになり、膨らみのある味わいの茶葉になりやすい。これが理由の二ツ目。
湿度が高いことが化学変化の安定化に繋がる、という話もあったのがそれだけは理解ができなかった。
そんな地域での萎凋
①比較的低温(10-20℃)での長めの感想
一般的な萎凋は20-30℃で行うそうですが、凍頂烏龍茶の地域は低いと20℃を下回るときもあるよう。低温では酵素反応がゆっくりになるので、それによりムラが少なく安定的に香り成分の発生が期待できるそうです。
②香り成分の保持
温度が低いことにより揮発性の低減、代謝リスクの低減などがあるようです。
③通気性の良さ
この地域は複雑な山間部にあるようで、自然にいろんな方向から風が吹くことによってムラのない湿度コントロールが可能なようです。
④斜面が多いこと
茶葉の排水が下に溜まりづらく、湿気が急激に上がらないとのこと。少し言いがかりな気もするがないことはなさそうだ。
このように地域性と絡みついた技術を今後はミードにも活かせるようにアウトプットできるように準備していきたいANTELOPEチームです。