おはようございます。オーストラリア編も今日で4週目。約1ヶ月の滞在を経て最終日を迎えます。
先週は「ピーツ・ピュア」のシャルドネ(1,188円)と「ヤンガラ・エステート・ヴィンヤード」のブラン(4,400円)の飲み比べをご紹介しました。(詳しくは、おはようびわ湖vol.153にて。)
今週は約3.7倍の価格差がなぜ生まれるのか、その要因を深掘りしていきたいと思います。同じオーストラリア産白ワインでも、これだけの価格差はどこから来るのでしょうか?
まずは2つの違いを整理
価格差が発生するということは、ワインに関する要素が異なるということ。深く調べる前にわかるそれぞれの違いをまずは洗い出してみることに。
===
・使用するブドウの種類数:1種類 vs 5種類
・ブドウの品種:シャルドネ vs グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、ピクプール、クレレット、ブールブーラン
・ワイナリー:ピーツピュア vs ヤンガラ・エステート・ヴィンヤード
・ヴィンテージ:2024 vs 2021
・購入した場所:コンビニ vs エノテカ
===
これらを踏まえて深掘ってみます。
使用するブドウの種類 - How many varieties?
あなたはどちらの方が高価格になると思いますか?
私の感覚では複数種の方が、その複数種をどのくらい合わせればいいのかの実験にかかるコストであったり、単純に収穫にかかる労働力・時間コストも高そうということで、複数種の方が高くなるという印象です。
実際にはどうなのでしょうか?
結論、ケースバイケースのよう。確かに複数種使用することで、一般的にコストは増えるので、その分高価格になる傾向があるよう。しかし最終的な価格は品質、市場需要、ブランド力など多くの要因によって決まるようです。
岡田くんの昨日の記事でも、ワインは「土地を表現」すると書かれていたように、ブドウが育った畑、当時の気候、地域特有の醸造技術など、「その時、その土地だからこそ表現できたこと」という独自性を大事にするつくり手が多く、その独自性を表現できればできるほと価値は高まる、と先日お話ししたインポーターの方もおっしゃっていました。
また単一品種の名前しか記載されてなかったとしても、必ずしもそのブドウが1つの畑から採れたとは限らないそう。初心者の私はそのことを知らずに驚き。
複数の畑から「シャルドネ」という品種を集めてきて作られる場合は、その土地のテロワールの反映がされてないので、価値は下がる。逆に単一畑の場合はテロワールを表現しやすいという観点で価値が上がることがある。
また複数畑からピックする方が、1つの畑から収穫するよりも収穫量も多くなり、大量生産が可能になりますし、リスク分散もできるので良いという側面もあります。
「2度と同じものは生まれない」という儚さがワインファンを増やす理由なんだろうな、と納得。しかも最近は地球温暖化の影響もあって、味わいの変化も起こりやすくなっている。そりゃ毎年飲み比べたくなる。
さて、それでは今回のブドウたちの出身地はどうなのでしょうか?
ぶどうの出自 - Where are you from?
まずは「ピーツ・ピュア」。どうやら単一畑ではなく、複数の畑から収穫されたシャルドネを使用している可能性がおそらく高そう。
確たる記載は見つけられていませんが、根拠は2つ。
1つは、もし単一畑を使用しているのであれば、それを価値としてうたうはず。ですがその記載はPete’s PureのHPや、他の販売サイトでも見受けられませんでした。
また2つ目の根拠としては、Pete's Pureが広大な土地でブドウを育てていることです。なんと803ヘクタールもの広大な土地でブドウを栽培しており、オーストラリアのブドウ栽培が盛んな産地エリアにおいても、平均面積は69.7ヘクタール程度とのことなので、かなり広大といえます。この規模は単一畑ではなく、複数の畑にまたがる運営を示唆していると言えることから、おそらく複数畑からピックされたと推測されます。
一方「ヤンガラ・エステート・ヴィンヤード」は、異なるブドウ品種ですが単一畑から収穫されたブドウを使用しています。これは「ヤンガラ」の哲学に通じます。
The Yangarra philosophy is to produce wines from our single-vineyard estate, that reflect an authentic sense of place.(ヤンガラの哲学は、単一畑のエステートから、その土地の本物の感覚を反映したワインを造ることです。)
- 引用元:https://www.yangarra.com/about-yangarra
「単一の畑で異なるブドウ品種が育つ」というのはピンと来なかったのですが、その気候・土壌が合えばさまざまなぶどうが育つことは不思議じゃないと納得。川の土手を歩いていると、いろんな植物が咲き乱れているように、ブドウも本来はいろんな種類が同じ畑に育っていたそう。
つまり今回の価格差をつけた要因の1つとして、単一畑か複数畑かということが作用してそうです。
ぶどう自体の価値 - Value of the grape itself
ぶどうの品種自体に高級・低級はあるのでしょうか?調べたところ、ぶどうそのものに高級・低級という概念は存在しないようです。
「え、でもシャインマスカットって高級じゃない?」そう思った方もいると思います。
確かに、シャインマスカットは「高級ぶどう」の代表格として知られています。これは単に品種そのものが高級だからじゃなくて、①誰にでも好まれる甘さと食べやすさ、②皮ごと食べられる便利さ、③美しい見た目、④栽培の難しさと手間、⑤そして何より高い需要...これらが合わさって「高級」というイメージが作られているんです。
もちろんそれぞれのブドウが持つ内的要因もありますが、外的要因と合わさって価値が作られる。当たり前のことに思いますが、改めて見るとより納得感があります。
少し話は逸れましたが、今回のワインでも同じことが言えます。シャルドネと、グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、ピクプール、クレレット、ブールブーランは、それぞれ異なる特性を持つぶどう品種であり、価格や評価が一概に「高級」か「低級」かで語れるものではありません。
シャルドネは、比較的どんな気候でも育ちやすく、世界中で愛されている品種。生産が比較的容易なので幅広い価格帯のワインに使われています。
一方、5種のブドウたち(グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、ピクプール、クレレット、ブールブーラン)は、それぞれが異なる役割を持つ「スペシャリスト」たち。
例えばルーサンヌは複雑さと熟成能力、ピクプールは爽やかな酸味、ブールブーランはミネラル感をワインにもたらします。
こうして見ると、シャルドネは「一人の歌手の魅力を全面に出す」ソロアーティストのよう、5種の方はまるでジャズバンドのような「それぞれの個性を活かしたアンサンブル」。どちらも魅力的ですが、複数のミュージシャンを揃えるバンドの方がコストも高くなる...というのは想像に難くないですね。
つまりまとめると価格差の原因は、
・複数種類のブドウを使っていること
・単一の畑で育てていること
の2つの要因が絡み合っていそうです。
しかし、ワインの価格差を生み出す要素はまだあります。ヴィンテージ(収穫年)の違いや購入場所による流通コストの差など、見逃せない要因も。
これらについては次回に深掘りしていきたいと思います🔍そしていよいよオーストリアのワインの世界にダイブしていく予定です🇦🇹それではまた来週!