前略、ソムリエな君 - 番外編「ポー」

おはようございます!これまでワインの記事を書いてきましたが、今回は辛口ワインに趣向の近いANTELOPEの新作ミード「ポー」について深掘りしてみたいと思います。

なぜ近いと感じるのか個人的な見解を述べると、

1. 「残糖感をほとんど感じない」

2. 「宮本さんのブラッドオレンジそのものの風味を感じる」

でした。

残糖感をほとんど感じない

過去のミードの中でも、特にドライなこのミード。

なぜなのか岡田くんになぜか尋ねてみたところ、3年前に初めて作ったブラッドオレンジのミード「宮本」が原点のよう。当時もドライな味わいを目指したものの思ったようにつくれなかった悔しさが残っていたんだとか。

岡田くんの敬愛する宮本農園さんがつくるブラッドオレンジ。その良さを最大限に生かしたミードをつくりたいと決意し、今回の再挑戦があったようです。

宮本さんと岡田くん。岡田くんのフレッシュな笑顔が眩しい
宮本さんと岡田くん。岡田くんのフレッシュな笑顔が眩しい


発酵が進むと糖分がなくなってドライになっていきますよね。今回も蜂蜜の糖分が発酵に使われたわけですが、今回の残糖は1g/LとANTELOPEのミードの中でも低い方。いつもどこかに蜂蜜感を感じるのに、それを全く感じないのはなぜなんだろうと聞くと、

蜂蜜は糖分があるからこそ、蜂蜜の風味がする

と岡田くん。

一見わかりやすいようですが、なんでそうなるのかと言われると「?」がまだ残ります。もう少し見ていきましょう。

蜂蜜は約80%が糖分(20%が水)で、果糖・ブドウ糖をメインに、少しのショ糖・麦芽糖などの糖が混ざり合っています。メインの要素である糖分が減っていくと、確かに蜂蜜らしさが残る可能性は低そうです。(蜜源植物の特徴や微量栄養素も風味に影響しますが、基本となるのは糖分)

確かにコーラから甘みが消えたら、もはやそれは別の飲み物に感じそうですもんね。

宮本さんのブラッドオレンジそのものの風味を感じる

ミードの良さは素材の素晴らしさを表現できるところ。ずっとそう思ってきましたが、今回は特にそう感じました。

良質なワインは、使用されているブドウ品種の特徴や、その土地の風土(テロワール)を反映すると言われていますが、まさに宮本さんのブラッドオレンジを皮ごと頬張っているのと似た感覚をしっかり感じます。実際に皮まで頬張ったので本当にそう思います。

なぜこんなに素材のらしさを感じるのか聞いたところ、

・「モロ」の良さである酸味を最大限活かすために、貯蔵期間を取らなかったこと(取ると甘みが増していく。貯蔵期間中に、果実内の有機酸(主にクエン酸)が徐々に分解・代謝されていき、相対的に甘みが際立つようになる)

・生の果実を全量の20%使っていること(普段のANTELOPEのミードも同じくらい)

・あえて火入れしなかったこと

が関係しているのではないかと岡田くん。

前回の悔しさは、火入れしたことで味わいが少し変わったところにあるようで。

残糖がほぼないこともあり、発酵はあえて止めてないんだとか。これから暑くなる季節なので、このミードは冷やして保管するのが良さそうですね⚠️

今回使われているブラッドオレンジは、ブラッドオレンジ界に存在する2種の中でも、赤みが強くて酸味をしっかりと感じる「モロ」。もう1つは「タロッコ」といいますが、そちらは甘みと酸味のバランスがよくそのまま食べるのに向いているんだとか。

ブラッドオレンジって実はどんな味か知らない人が多いのかも。ポーを通してブラッドオレンジの魅力に気づいてもらえると嬉しい

と岡田くん。きっとみんなの心に届くと思いました。


心血を注いでブラッドオレンジを育てた宮本さんと、心血を注いでミードを醸造した岡田くんの思いがしっかり反映された素晴らしいミード。2人の情熱をじっくり感じてみて。


テイスティング、そしてペアリング

そんな素晴らしい「ポー」をまずはテイスティング。

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・外観:やや濁っていて、芯を感じるどっしりとしたオレンジ色。細かい泡が少し浮かんでいて、その泡に呼ばれている気がして、飲む前からワクワクさせてくれる。

・香り:インキーな香りがまず最初にきた。しかしその奥には甘いマスカットのような香りが忍んでいる。パッションフルーツのような香り、蜂蜜の香りも感じる。

・味わい:口の中にガツンとくる感じはないが、鼻にツンとくるアルコール感がある。ドライで軽やかではつらつとした印象。ブラッドオレンジを皮まで丸ごと食べているようなジューシーさとほろ苦さがたまらない。ポップだけど、安定感のある重低音がしっかり支えているミード。
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いつもここでこんな食事が合いそう、で終わっていましたが今回は私も心血を注ぎ5つのペアリングを試してみました🍽️

ここでちょっとペアリングについての思いをば。

私が初めてペアリングを体験したのは、大学時代スターバックスでアルバイトをしていた時のこと。

スタバの定番ケーキニューヨークチーズケーキ x スマトラコーヒーのペアリングを試した時、身体的感覚が今でも残るほどの感動を覚えました。口の中の“気持ちよさ”を体感したのです。

チーズケーキの酸味を、スマトラコーヒーの苦みと重さがすっきり消し去っていく。逆にスマトラの苦みや重さをチーズケーキの酸味が掻き消してくれる。結果的に口の中にはふんわりとした優しい世界が広がっていました。

チーズケーキ何個でも食べちゃうやん!ってなったのを覚えています。(大学生だったから食欲旺盛だったのではない)

そんな原体験がありながらも、なかなかできていなかったペアリング。今回は5種類、試してみました。


ワインのペアリングとは?

まさに私が大学の時にコーヒーとチーズケーキで感じたのと同じように、ワインとお料理の良いところがより引き立ち、そして逆に苦手な部分が消えて、相乗効果によって双方の味わいが豊かになることが成功の証です。

ペアリングの方法は?

ペアリングを楽しむ基本的な手順については下記の通り。

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1. 口の中で料理を楽しむ

2. 料理を飲み込む

3. ワインを一口飲み、風味の調和を感じる

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料理を口に含んだ状態でワインを飲んで混ぜてしまうのはあまりおすすめされていない、とのこと。今まで意識してなかったので注意しないと。



さあどうやってペアリングしよう?

ペアリングの方法は、さまざま。基本的には「合わせる」よう。色や産地、香りや味わいや重さなど。相反する要素を合わせて中和させるという方法もあるんだとか。


今回は、

1. 岡田くんがおすすめしていたペアリングを試す

2. 色み(オレンジ)で合わせる

3. 味わい(苦み)で合わせる


の3つの軸で進めてみました。


結論、岡田くんがおすすめしていたペアリング「トマトと昆布締め鯛のカルパッチョ」が優勝でした!それぞれレポートを書いてみたので、よかったら読んでみてください。

1. 岡田くんおすすめのペアリング「トマトと昆布締め鯛のカルパッチョ」

「カルパッチョ」という響きに対して、家で作れる代物ではないと勝手に思い込んでいたカルパッチョ。実はそんなに難しくありませんでした。

今回は昆布締めということで、食べる前日に鯛を昆布でぐるぐる巻きに。当日、①鯛を昆布から取り出して切って、②トマトを盛り付けて、③オリーブオイルとレモン汁をかけて、という簡単3ステップでつくれました。(dancyuさんのレシピを使用、あいにくトマトは一種類)

鯛本来の味わいと、ほんのり昆布が香る風味を口に残したままポーを飲むと、ポーの苦みは消え去り、果汁を飲んでいるような爽やかな酸味だけが残りました。トマトの酸味もあいまって、鯛の若干の油っぽさを綺麗に消してくれる。手が止まらないベストペアリングでした。

2. 色み(オレンジ)で合わせる

色み部門で合わせたのは、

・サーモンと新玉ねぎのカルパッチョ
・チキンのトマト煮

どちらかというとサーモンに軍配。

サーモンと新玉ねぎのカルパッチョ


サーモンのジューシーで満足感のある感覚が残る状態で、ポーを飲むと、鯛の時と同じく、苦みがおさまり、爽やかな酸が口の中に広がります。

ちょっと疲れて帰ってきた日に。これから暑くなって食欲がなくなっても、ちょちょいとこさえるおつまみとして楽しめそう。幸せな晩酌。サーモンのオイルなのか、オリーブオイルをひたひたにしすぎたのか、とってもオイリーなはずなのにスッキリと流してくれるポー。お箸が進み、勢いよく食べたせいか、少し胃もたれ気味に。

色合いはもちろん、トマトの酸味があうのではないか?ということで試したチキン煮。合わないわけではなく、カルパッチョで感じたような爽快感は感じなかった、という感想です。


チキンのトマト煮

逆にブラッドオレンジの苦みがしっかり口にの中に残る結果に。苦さを楽しみたい方にはベストなペアリングかも◎


3. 味わい(苦み)で合わせる

この部門で合わせたのは、

・アスパラガスとベーコンのオイルパスタ

・チーズ3種

です。

これはどちらも好みでした。

アスパラガスとベーコンのオイルパスタ

アスパラの苦みがミードを飲むとすっと消えていき、口に残るのはほんのりとした柑橘感。ベーコンのジューシーさも流してくれます。食事中にすっきりした柑橘を、お口直しのように吸ったみたいな感覚に。苦み、オイル感のあるお料理にはマッチするんだなと思いました。

ちなみに本当は芽キャベツのパスタにしたかったのですが、あいにく売り切れでした。芽キャベツを試してみた方の感想もまた聞きたいな。


チーズ3種

感覚的にブルーチーズが合いそうと思い、KALDIへ。そこには3種のチーズセットがあり、せっかくなら他のチーズとも比較しようと、セットを購入してみました。

ダナブルー、グリュイエール、ブリー(写真左から順)という3種の中で一番、よかったのはブリーでした!それぞれの感想を簡単に。。

*ダナブルー
ミードの苦みをより感じる。若干チーズの塩みも残り、他のペアリングに比べると「めっちゃあう!」というわけではないかも。不思議なことに単体で飲むよりも苦味をガツンと感じました。

*グリュイエール
クリーミーでまろやか、ちょっとした酸味が楽しいチーズ。このチーズのおいしさと、ミードの味わいがそのまま平行に走っている感覚を覚えました。

*ブリー
ねっとりしていて、口の中に独特のくさみを感じるチーズ。ミードを飲むと、この臭さが緩和され、ブラッドオレンジ由来の爽快感が残るので、ずっと食べて飲んでいられる感覚。ブリーチーズをつまみながら、お友達とのお喋りに花が咲きそうと思いました🌸

===

とても長い記事になりましたが、いかがだったでしょうか?ペアリングは理論的に考えられるんだろうな(〇〇の成分と〇〇の成分が結合してこんな風味を醸すなど)!と思い、理論的な学びも今後していきたいと思いました。

750mlあったポーですが、試飲も含めて1人で2日間で飲み干してしまいました🍊3食分しっかりと楽しめて幸せな2日間。また素敵なペアリングを発見した人がいたらぜひコメントでも、DMでもなんでもまた教えてくださいね📩

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