「ミード まずい」に対する考え

1. ミードはまずかったのか?
 
勝手にgoogleが〈ミードってなんかまずそう〉って判断するメンヘラサイトだとは思えないので、きっとそこには色んな昔からの意見が堆積して、ミードってまずいって思ってる人いっぱいいますよ!みたいな検索結果になってるのかなと。
 
どうしてそんな声が多くなってきちゃったのか。
実際にミードってまずかったんだろうか。

結論から言うと、伝統的に作られてきたミードは醸造学的にずれていることが多いので、結果として「質のよいお酒」ではなかった可能性が高いです。
 
発酵というのは酵母が糖分を利用してアルコールと二酸化炭素を出す動きのことで、この動きが健全であれば基本的に質の良いお酒ができます。
蜂蜜は糖分こそ潤沢にあれど、アミノ酸と脂質といった酵母の生命活動に必要な栄養素がほとんどありません。そのため、基本的に蜂蜜と水だけを混ぜたものに酵母を投入しても健全な発酵を得ることは難しいです。
具体的にはミードはアルデヒド系の匂い成分が残存しやすく、発酵が途中で止まってしまう昔のミード作りにおいては特徴的な香りであったはずです。ビールではオフとされる匂いの代表が、ミードでは「伝統的な匂い」として許容されてきたのかもですが、何も知らないぼくたち日本人にとっては不快な匂いにすぎなかったかもしれません。
 
現代では酵母の開発技術が卓越してきて、栄養素が少なくても健全な発酵をできるように近づいてきましたが、ここ最近の話です。
また、ミードは技術共有がとても少ない世界で、「伝統に裏打ちされたミードこそ至高」みたいな流れがないこともないです。伝統と技術開発の難しい点ではありますが、プレイヤーが少ないミード業界だったからこそ起きてしまった悲劇とも言えるかもしれません。
 
 あとは、発酵が途中で止まるから極甘口のものも多くて、食事と合わせることが前提の日本にとってはペアリングが難しく、敬遠されがちだったこともあるかもです。
2.養蜂のクオリティーが導いたもの
 
次は完全な主観です。
養蜂のクオリティーが上がってきたから、ミードの味わいに変化がおきてきたのではないか、という話です。一見すると変な話ですが、これまでの経験に基づいた持論です。
 
去年から養蜂を初めた僕たちですが、養蜂を教えてもらった先生の浜松にある養紡屋の塩見さんがつくる初夏の蜂蜜にいたく感動したのを覚えています。夏の蜂蜜は水分量が下がりきらず、少し発酵するものもあると。それらの蜂蜜には微量の酸味があって、たくさんの南国フルーツの香りがあって、もうほんとに美味しいんです。
 
昔の養蜂ってそういう蜂蜜おおかったんじゃないかって思ってて。蜂蜜そのものに酸味が出てるから、ミード自体にも軽やかな酸味がのっかって、味わいのバランスが取れてたのかなって想うんです。
 
ミードの世界では、よく「Plane」っていう表現があります。甘みだけで味わいが単調、っていう非常に辛辣な表現です。このプレーンな感覚が「ミード まずい」を生み出したに違いないって思ってるのですが、大昔はたぶん酸味あったんじゃないかなと。
 
発酵では有機酸は一応でるんですが、甘みをマスキングするほどには出ないので(乳酸菌や酢酸菌がわかなければの話ですが)、じゃあどこから酸味をとるのかという蜂蜜だった可能性も大いにあって。
 
養蜂技術は世界中であがってきているはずで、発酵しない蜂蜜が大前提で供給される世の中になってきました。クリーンな蜂蜜過ぎて、結局単調な味わいになりすぎちゃった、っていう可能性も捨てきれません。
 
3.日本の間違ったマーケティング
 
マーケティングなんて言葉を覚えたのはちょっと前ですが、市場教育という意味では日本は少しおかしな方向に行くときがあります。クラフトビールの世界を見ててもそうなんですが、どうしてかいつも「それっぽい間違った情報」が我が物顔で歩くことが茶飯事です。
それだけ醸造学って世間から隔離されてるし、家でお酒を作れないから間違いを間違いを認識できなかったりもするのですが、それはさておき。
 
ミードという世界においても、おかしいマーケティングがたくさんあります。
 
代表的なのが「蜂蜜と水だけで作ったミードこそ純正」
これは本当によくなくて、ミードの世界には昔から蜂蜜以外にフルーツやスパイスを入れるレシピがたくさんあります。純正とかピュア、って言われることもあるんですが、全然そんなことないです。それ言い出したら、ビールだってホップ使う前はグルートっていうハーブの寄せ集めを使ってたんだから、グルートビアこそ純正なんだ!って主張がまかり通るじゃないか。美味しく作ろうと進化してきた過程を否定するのは良くないです。
 
蜂蜜と水だけで作るミードは何回も言う通り、健全に発酵させることができるようになったのは最近のことです。

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