沖縄 東村(ひがしそん)の、照りつける太陽が肌をじりじりと熱くさせる静かな畑で、久高さんはひとり、パイナップルを育てている。
もともとはマッサージ師として人の体に向き合っていた彼が、どうして畑に立つようになったのか。
作物の成長に一喜一憂しながら、自然と向き合い、家族に支えられて続ける農業の中で、久高さんの考える “愛” のかたちを聞きました。

久高さんは、農業を始める前、マッサージ師として働いていたそうです。多くの人の体に触れ、体に関して考えるなかで、「結局、人の体は“食べるもの”から作られている」という考えに行き着きました。
根本的な健康は日々の食から生まれる。その実感が積み重なった結果、農業への関心が大きくなっていったのでした。
そのタイミングで、おじいが守ってきた畑の話が出てきて、もともと興味を持っていた農業を、“継ぐ”というかたちでパイナップル農家のスタートです。

今は、引き継いだパイナップルの圃場(ほじょう)を、基本的に一人で管理しているそうです。一番好きな作業は収穫。同じ品種でも大きさや味わいに違いがあって面白いそうです。
パイナップルは育つまで時間がかかるようで、植えてから収穫まで約2年。農業は天候に振り回され、作業の量も多く、計画通りにいかないことも多いそうです。
それでも久高さんが畑に立ち続けられているのは、奥さんの理解があるからでした。
早朝からの作業や、天候次第で急に予定が変わる日常。普段は無心で作業に勤しんでいるそうですが、そのすべてを受け止めてくれる存在があることに、久高さんは深く深く感謝していました。

農業は一人でやっているようで、決して一人では続けられない。久高さんは家族の理解と支えがあってこそ、今日も畑に立ち続けられるとおっしゃっていました。畑に立つ久高さんは沖縄の土と風、そして日々の積み重ねにそっと支えられているようでした。
取材・執筆: 春日佑介