ボンジョルノ🇮🇹イタリアワインに触れて今週で5週目!
先週スーパーのワインコーナーに行くと、ぶどう品種の「ガルガネガ」や、ワインの名前「ソアーヴェ クラシッコ」を見かけ、パートナーに「これはね〜」と説明する機会がありました。また、エノテカの店員さんにも「ガヤ」のワインですね?とちょっとドヤってしながら話しができたりしました。
少しですが知識が増えると、人との会話の幅も広がってなんだか人生が豊かになった気がしています🍷「ワインは一生かけて楽しめる趣味」というのは本当だなと実感。まだ日本を含めると4カ国分の勉強しかしていないので、これからもっといろんなことを知れると思うとワクワクが止まりません。
いつもより前置きが長くなりましたが、今日は先週の続きで。「ネロ・ダヴォラ」というぶどうの品種に関わるお話し。先週生まれた3つの疑問のうち、今回は2つ目に注目。
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【先週の3つの疑問】
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「ネロ・ダヴォラ」の特徴とされる"凝縮された甘みの果実味"は、どのような条件で生まれるのだろう?
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イタリア国内または、他の国で「ネロ・ダヴォラ」と似たようなブドウはあるのか?
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発酵前と発酵後で、ブドウの味わいはどのように変化するんだろう?
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これらの疑問は、「ネロ・ダヴォラは、凝縮された甘みのある果実味が感じられるブドウで、ボリューム感のある(フルボディ)ワインが多く生み出されている」という記述をよく見かけたことから生まれた問いです。
ブドウの世界では、「シノニム(同義語)」という概念がありますよね。これは、同一のブドウ品種に対して使用される異なる名称のことを指します。地域や言語、歴史的な経緯によってその違いは生まれます。
例えばアルゼンチンで勉強した「マルベック」のシノニムは、フランスでは「Cot | コー or コット」、また主力品種として扱っているカオール地区(西南地方)ではオーセロワ(Auxerrois)と呼ばれています。
「凝縮された甘みのある果実味」って、なんだかよく聞きそうな表現だなと思ったことから、似たようなブドウ、つまりシノニムがあるのではないか?と考えました。
また、
・このブドウがなぜボリューム感のある(フルボディ)ワインを生み出すのか?
・発酵過程がぶどうの味わいにどう影響するのか?
という疑問も湧いてきました。そもそもワインの発酵ってぶどうの味わいとどう関係があるんだろうって気になっちゃって。
1番については、「おはようびわ湖 vol.91」で紹介しているので気になる方はぜひ遡ってみてください🔍3番は来週お届けする予定です📮
では今回は、2つ目の疑問に迫っていきます!
イタリア国内または、他の国で「ネロ・ダヴォラ」と似たようなブドウはあるのか?
■シノニムはあるか?
まずは「シノニム」があるのか調べてみたところ、「カラブレーゼ」という同じくシチリアを代表する黒ブドウ品種がありました。
イタリア南西部の州・カラブリア州を連想しやすいようですが、アヴォラ村というシチリア南東部の方言「Calaulisi(カラウリシ)」(アヴォラのブドウ)に由来しているそうです。
カラブレーゼは、ネロ・ダヴォラと同じ遺伝子を持ちますが、育つ地域が違う=土壌や気候が違うのでブドウの味わいも異なります。
漫画「タッチ」のかっちゃんとたっちゃんの関係なのか、それとも、今川焼きと大判焼きの関係なのか。最終的な味わいが異なるのであれば、前者かなって思いますが皆さんはどうでしょうか?
特徴についてまとめます🍇
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〈地域別特性〉
1. カラブレーゼ
- 主な地域:北西部(トラパニ県など)
- 土壌:砂質粘土
- ワインの特性:力強いタンニン、スパイシーな風味
2. ネロ・ダヴォラ
- 主な地域:南東部(アーヴォラ周辺)、シチリア島全土
- 土壌:石灰岩質
- ワインの特性:ミネラル感、チェリー系の香り
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先週ネロ・ダヴォラが育つ土壌の特性として「粘土質」と書きましたが、これは北西部の特徴だったんですね。シチリア全土で栽培されているネロ・ダヴォラですが、地域によって呼称が違うということがわかりました。
同じ遺伝子を持ちながら、異なる地域で育つ二つの品種。では、シノニム以外かつシチリア以外の地域ではどうなのでしょうか?
■イタリア以外の地域での可能性
英語で“Nero d’Avola”と検索すると、2つ興味深い記述を発見したのでご紹介。
1つ目はイギリスのオンラインワイン事業者「Virgin Wine Online Ltd.」の記述。
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- if Cabernet Sauvignon is your thing, or perhaps you’re a fan of Syrah, then this should definitely be next on your list to try!
もしカベルネ・ソーヴィニヨンがお好きなら、あるいはシラーのファンなら、次はぜひこのワイン(ネロ・ダヴォラ)を試してみてください!
引用元:https://www.virginwines.co.uk/hub/wine-guide/grape-varieties/nero-davola/
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カベルネ・ソーヴィニヨンもシラーの特徴を調べたところ、確かに類似点はありそう。それぞれのワインの勉強をする際は、ネロ・ダヴォラも忘れず一緒にテイスティングしてみます!
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◎「カベルネ・ソーヴィニヨン」と似てそうなポイント
・フルボディで力強い
・濃い色調(深いルビーレッドから紫がかった色)
◎「シラー」と似てそうなポイント
・フルボディで力強い
・凝縮された果実味(同じ表現だ!!)
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そしてもう1つは、IWC ( International Wine Challenge | 国際的なワイン品評会)のHPに記載されていた研究の記述。
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- The expert and trained tasters also drew similar comparisons between Shiraz and Montepulciano (both of which came from the Barossa Valley), as well as between Grenache and Nero d’Avola wines.
専門家や訓練を受けたテイスターたちは、(バロッサ・ヴァレー産の)シラーズとモンテプルチャーノの間、そしてグルナッシュとネロ・ダヴォラワインの間にも、同様の類似性を見出しました。
引用元:https://www.internationalwinechallenge.com/Canopy-Articles/climate-change-substitute-reds.html
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この研究は、近年温暖化が進むオーストラリアで、シチリアとポルトガルのブドウ品種は既存品種の代替となりうるか?という問いのもと行われたもの。こちらでは「グルナッシュ」との類似性が見出されたようです。
どちらも赤い果実、花、キャンディのようなニュアンスを持ち、同時にボディとタンニンが控えめという特徴がポイントだそうです💡他の比較も気になる方はぜひサイトを覗いてみてください🔍
ネロ・ダヴォラと、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、グルナッシュのブドウを使ったワインを飲み比べる会をまた別の会で、開催してみてレポートしようと思います🍷(ANTELOPEのみんなは参加してくれるかな?)
さて今週は「ネロ・ダヴォラ」をつかった別のワインのテイスティングをしてみました。先週のワインも残っていたので、比較もしてみました🍷
■今週のテイスティングレポート
ROCENO NERO D’AVOLA 2021 | ロチェーノ ネロ ダーヴォラ(カンティーネ エウロパ)
このワインをつくっているのは「Cantine Europa | カンティーネ エウロパ」。2,000件以上の農家を束ねるシチリア州の中でも最大規模の生産者さん。シチリア島の西部・マルサラの近くで1962年に設立しました。
あれ?位置的には、「カラブレーゼ」と呼ばれるブドウのはず。おかしいなと思い調べると「ネロ・ダヴォラ」が国際的に使われている名前で、カラブレーゼはその地域でしか呼ばれてないローカルな名前だそう。地理的には、北西部なのできっと力強いタンニンやスパイシーさを感じるではないでしょうか✍️
また、特に高品質なラインナップのワインには上記の「シビリアーナ」のマークがワインに付与されるそうです。今回のワインにもついていたので、ワクワクが増します!!
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・外観:深みのある黒紫色。先週飲んだ「PARVA RES NERO D’AVOLA」よりも色が濃い。粘性はほぼなく、サラサラしている。
・香り:マニキュアのような匂い、酢酸エチルをしっかりと感じました。香りがしっかり立っていて、カシスやブラックチェリーを感じる。タバコっぽいというか土っぽいような、スモーキーさもワインの土台を支えるべく鎮座している。
・味わい:アタックは軽くもなく、重くもなく。生き生きとした酸味が口の中に広がる。飲んだ後には、ウィスキーを飲んだ後のようなアルコール感と、舌の上に渋さがしっかりと残る。(これがタンニン!)余韻は長め。
余談:「PARVA RES NERO D’AVOLA」の方がさらっとしていて、白ワインのようなミネラル感もあったので、「PARVA RES NERO D’AVOLA」は南部のネロ・ダヴォラかなと思いましたが、なんとこのワイナリーも今回と同じ地区のワインでした。一筋縄ではいかないところが面白い。
・合わせてみたいお料理:ジューシーな唐揚げや、トマトたっぷりのトマトパスタ、マルゲリータピザとかも合いそう🇮🇹
・価格:1,650円(税込)/750ml
こちらもお手頃で嬉しい*日常使いできる!
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来週、ようやくネロ・ダヴォラ章が完結します。醸造のお話なので少し難しいところもありそう。みんなに質問しながら頑張りたいと思います!