ミードの公式といえば
蜂蜜+水+酵母(+副原料)
であることは皆さんご存知でしょうか。
この中で僕たちが違いを作るためにやってきたことは
・味の違う蜂蜜を使う
・酵母を使い分ける
・副原料を使う、組み合わせる
ということでした。
しかし、今回僕が着目したのは「水」の部分です。
ミードを作る際の水とは水道水やミネラルウォーターのことです。
水質を調整したり、地域の水を使うということはあっても水であることには変わりありません。
そこで思いついたのが「水」をただの水ではなく、お茶やジュースのような「液体」として作り込むのはどうかということです。
例えば蜂蜜とジンジャーエールを混ぜてそこに酵母を入れて発酵させるとか、事前に発酵させた果物の果汁と蜂蜜を混ぜてそこにさらに果物やスパイスを入れるといった作りです。
あんまりピンとこないかもしれませんが、もう少し説明します。
ミードの弱点
ミードを自宅でも作ってみたという経験がある人なら分かるかもしれませんが、蜂蜜と水を混ぜて酵母を加えて発酵させきると焼酎水割りみたいな味になってしまいがちです。
とても飲めたもんじゃないです。
なんでこんなことになるのか。
ビールや日本酒、ワインといった他の醸造酒と何が違うんでしょうか。
これは簡単に言えば蜂蜜には糖分以外の成分が無さすぎるということが原因になっています。
麦や米、ブドウにはタンパク質やポリフェノール、有機酸などが十分に含まれているために発酵させ切ったとしてもそれが雑味になり美味しいと感じる口当たりになるんです。
しかし蜂蜜にはそれがないために、発酵しきると水とアルコールというシンプルな構成になりやすいんです。
だからこそ甘みを残したり、副原料でバランスをとることでこの弱点を克服することができます。
クラフト「水」
ドライでも美味しいミードを作るとなると先ほどの問題を考えなければなりません。
例えば、最近出たブラッドオレンジのミード「ポー」ではグリセロールというとろみと甘みを感じさせる物質を多く出す酵母を使用することでドライながらもしっかりとした口当たりを表現することができました。
このように副原料や酵母の使い分けでもドライなミードにアプローチすることはできます。
しかし、今回は副原料でも酵母でも蜂蜜でもない「水」を作り込むことで美味しいミードを作れるんじゃないかと考えています。
今までantelopeでこの考え方で作ったミードがありました。
それはお茶のミードとブラッドオレンジ果汁100%で作ったミードです。
前者は緑茶やジャスミン茶、スパイスなどをまずお茶として作ってから蜂蜜と混ぜて作る。
後者はまだ発売してませんがブラッドオレンジの果汁だけを水として蜂蜜と混ぜて作りました。
お茶からくる雑味であったり、果汁しか使わないことによる雑味が口当たりに大きく影響しました。
結果的に「水」の部分が副原料と混ざっていることはあったのですが、「水」を最初から設計して作り込んでいくという発想を体現したのはこの2つだったのかなと思います。
つまり仕込みに使う水をお茶やジュースとして作り込むことでさらに自由なミード作りができるのではないでしょうか。
文化的にどうか
ミードとは蜂蜜+水+酵母である。それ以外認めない。
という文化であったら上記の考え方は邪道ということになります。
しかし、ミードというお酒はメロメール(果物のミード)やメスグリン(スパイスのミード)、パイメント(ブドウのミード)やサイザー(りんごのミード)といったように様々なジャンルが存在しています。
国際的なコンペでも部門として認められているほどなので、ある意味ミードは何かと混ぜることが認められている文化を持っているといってもおかしくないと思います。
古くは古代エジプトからハーブやスパイス、果実を入れることが一般的であったようですし、いろいろ混ぜる方がミードは美味しいと思っていた人たちが昔からいたということなのかもしれません。
そう思うと、「水」を作ることもミードを美味しくするための考え方として受け入れられるんじゃないかなぁと思ったりもします。
ただそうなるとなんでもあり過ぎて面白く無くなるという未来もあるかもしれません、、、
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ミードの作り手としては結構面白いと思ったのですが、みなさんはどうでしょうか。
日本酒の水をジュースにしてしまったらどつかれそうですが、ミードだからこそ楽しめるんじゃないかなと思います。