祇王は僕たちANTELOPEが工場を構える土地の地名。その昔、妓王(祇王)という清盛の寵愛を受けたお方に因んだ土地のよう。
そんな地域のありがたいお名前を頂戴したのがこのGiou-祇王というミード。実は僕たちが工場を構えた一番最初に仕込んだミード。長期熟成していたのでリリースは遅かったけど、仕込んだのは一番早かったんです。
シャープな苦味とアルコール度数のボリューム感、ドライさがなんとなく長く続きそうなスタイルなのかなと思って作りました。
〈Local→Japan〉
ローカルな地名が全国に広がるのはお酒がきっかけだったりすることも少なくないと思っています。その最たる例が日本酒なのかなと。
地域に根ざしたい、と思って作った醸造所では1mmもないんですが、気づいたら滋賀loverになっていて。野洲loverになっていたりして。生まれも育ちも八王子市なのにね。
自分たちも野洲、あるいは滋賀を代表するモノづくり会社になっていけたらいいな、と祇王を片手に思うのです。
*長期熟成するから品切れが多いのですが、ご容赦ください。これもローカルならではと思って。
〈Tasting Note〉
-
シャープな苦味とスムースな口当たり
-
アルコール度数12%の飲みごたえ
-
新緑の茶葉を揉んだような青々とした香りとほのかな酸味
-
春野菜を彷彿とさせる味わいの構成
(昔のラベル)
春野菜のちょっと大人な苦味と爽やかな香りが祇王とぴったりで、春だったら是非シーズンにしか味わうことのできない野菜と一緒に召し上がってみてほしいです!フキノトウの天ぷらなんて、最高かと。
おまけ〈昔書いてた祇王のエピソード〉
僕にとって祇王はかなり特別な存在でありまして。思い出の量よりも質が高いといいますか、なにより自分の工場で初めて仕込んだレシピでした。
本当はもっと甘い状態で、蜂蜜らしさがはっきり分かるようなレシピを当初は想定していました。ただ、実はタンクで熟成させて瓶詰めされるときを待っている間に横のタンクたちで早めに詰めたミードたちから色んな問題が発生しまして。それはもう本当に色んなトラブルが起きたんです笑
そうこうしている間に、低温でずっと熟成されていた祇王は超低温にも関わらずゆっくりとゆっくりと発酵が進んでいました。1~2℃で酵母が活動したとしても大したことないだろうとずっと寝かせていたのが功を奏したのか、久しぶりにタンクからサンプルを取り出すと小気味よいキレと今までに嗅いだことのない芳香を感じるお酒になっていました。
で、結局またどうしようどうしようとバタバタしている間にもお酒の質は変わっていき、マスカットらしさを感じたフレッシュさが新茶のようなきれいな青々とした香りに変わっていきました。苦味もシャープで、どこまで成長しちゃうんだろう!と不安とワクワクで感情が右往左往してました。
そんなこんなで仕込み始めてから半年ほど経過してからようやく瓶に詰めて出荷することになりました。
「名前どうしましょ?」
「キレもよくて、日本酒みたいな感じもあるよね」
「日本酒っぽい名前とかどうすかね」
お酒の名前を決めるときはだいたいこんな感じから始まります。色々と案は出たのですが、僕たちANTELOPEの本拠地を構える「祇王地区」からありがたいお名前を頂戴することに決めました。
地域を代表するお酒、なんて口が裂けても言えませんが、地域の人たちに愛されるようなそんなお酒になってくれたらいいな。と心底思っています。
春先の気持ちいい日々の中で、祇王を片手に昔話に花が咲いたら楽しいだろうなと思いながら瓶詰めをしました。作り手の余計な愛情がいつもより多く詰まった1本になりました。是非、お手にとっていただければ醸造家冥利につきます。