おはようございます!今日はオーストリアワインの最終回。白ワインが主流のオーストリアですが、今日は赤ワインについて探っていきます🍷
オーストリアといえば、先週触れたグリューナー・ヴェルトリーナーをはじめとする白ワイン。ブドウ栽培面積の約70%は白ワイン用品種が占めています。(詳しくは、前略、ソムリエな君 〜オーストリアのワイン事情から試飲会まで〜にて説明しています)
残りの30%で造られる赤ワイン。「ブルゲンラント州」が国内の赤ワイン生産の中心地。
この地域はハンガリーとの国境に沿って広がり、「パノニア平原」という平原からの暖かい風の影響を受ける温暖な気候が、赤ワイン用ブドウの熟成に理想的な環境を生み出しています。ウィーンの東に位置するこのエリアでは、赤ワイン用品種の栽培面積が州全体の40%以上を占め、オーストリアの赤ワイン生産の半分以上が行われている、というデータも。
「ブルゲンラント州」は、他のワイン生産地域と比べてブドウの生育期の平均気温が約1〜2℃高く、日照時間も200時間以上長いです。年間降水量も少なめ。土壌は、ローム(砂・シルト・粘土の混合)、粘土質、石灰質、スレート(粘板岩)、褐色土など、地域によってさまざまな土壌が存在するようです。
赤ワイン用のブドウの場合、果皮が厚く、糖度と色素(アントシアニン)、タンニンの蓄積に時間がかかるため、十分な温暖さと日照が不可欠です。(ウルグアイワインの時に詳しく説明しているので、気になる方はこちらも参考ください)
雨は少ない方が良い理由としては、成長期や成熟期に多くの水分を吸収すると、細胞が膨張し果実が大きくなります。果実が大きくなると、果皮(皮)の表面積に対して果肉(果汁)の割合が増え、果皮に含まれる色素やタンニン、香味成分が果汁に対して希釈されます。その結果、ワインにしたときに色や味わいが薄く、個性のない仕上がりになりやすい、という理屈です。
ブドウ品種で見るとオーストリアで主要なのは、「ツヴァイゲルト」が全体の14%程度(黒ブドウの中だと40%程度)。
*余談ですがドイツ語を少しかじってた私は、「ツヴァイ=2」、「ゲルト=お金」で2倍のお金をもたらしたブドウ品種なのか?と思いましたが、ブドウを開発したツヴァイゲルト博士から名前をとったようです。
他国の黒ブドウが育つ地域に比べて比較的気温が低いので、リンゴ酸などの酸が消費される量が抑えられているため、酸味が比較的残るのです。例えば南欧や新世界の温暖な産地(アルゼンチンやウルグアイなど)は糖度が高くなりやすく、アルコール度数やボディも重くなりがち。
それらに比べると、糖度は控えめ、酸味は高め、ボディは細め。それがオーストリアワイン。
そんな情報を手に入れる前に、テイスティングをしてみました🍷実際のところどうなのでしょうか?
■今週のテイスティングレポート
martha rouge / マータ・ルージュ 2023 | ワイングート・マーティン & アンナ・アンドルファー
「ワイングート・マーティン & アンナ・アンドルファー」が位置するのは、「ブルゲンラント州」ではなく、先々週と先週触れたのと同じく、オーストリア最大のワイン生産地「ニーダーエスタライヒ州」。この地域はブルゲンランド州と比べて、冷涼で昼夜の寒暖差も大きくフレッシュな酸が特徴です。
年間生産量約45,000本、管理面積約16haを誇り、オーストリアのワイナリーとしては中規模。(平均的なワイナリーの畑面積は2ヘクタール強とされていて、年間生産量も多くの小規模生産者は数千本~1万本未満、中規模で1~5万本程度)デンマークの有名レストランで、ANTELOPEにもチームが遊びに来てくれた「noma」で採用される実績を持つ実力派のワイナリー。
- respect the vineyard and to work with it naturally -
「自然に任せ、余計な作業はしない」「土壌を信じて多くのことは行わない」ことを大切にされていて、畑では多様な植物を共存させるなど、ブドウ樹が過度なストレスを受けないような環境づくりを重視しています。有機栽培を実践し、化学肥料や除草剤を使わず、自然な生態系を維持しています。
今回のワインは「ツヴァイゲルト」と「ソーヴィニヨン・ブラン」のブレンドワイン(アッサンブラージュ)です。
ソーヴィニヨン・ブランは通常、単独で白ワインとして醸造されるブドウですが、ツヴァイゲルトに混ぜることで、赤ワインにより鮮やかな酸味と柑橘系のアロマを与えてくれるよう。もともと酸味があるブドウのワインなので、よりスッキリしてそうですね。
・外観:やや濁ってて、モヤがかかっている。薄めの紫色。粘性はほぼなく、さらっとしている。
・香り:開いている。ラズベリーやトマトのようなキュンとしたフレッシュな香り。マニキュアの除光液のような香りも。若々しくて、こちらも元気が出るようなポジティブな印象をかもしています。
・味わい:アタックは軽くて、ドライだけどなめらかですっと口に入ってくる。酸味がしっかりあって冷やして飲むとよりキリッとする。さらさらしていて、タンニン感や渋みはほぼ感じなかった。余韻にはほんのり甘みが残ります。
・価格:4,750円(税込)/750ml
やはり予想していた通りの軽さと酸味、スッキリ感でした。今まで飲んできたどの赤ワインよりも軽くて、これなら赤ワインの渋みが苦手な人にもおすすめしやすいと思いました🍷
■さいごに:「樹齢」について
先週「ブドウの房を減らして、栄養をいき渡せることによって糖度が上がる」という話を聞いた時から、ブドウの「木」に対する興味を少し持っていたことから、最後に少しだけ触れてみたいと思います。
今回は2001年に植樹された畑で、ソーヴィニョン・ブランは2007年に植樹された畑で育ったとの記載がありました。どちらもだいたい20年前後ですね。
調べてみると、何年くらいが新しいとか古いという明確な国際基準や法的な定義はないそう。とはいえ一般的な目安はあるようで、
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・新しい樹齢:10~20年未満
・成熟期:20~30年程度
・古木(高樹齢):おおよそ25~40年以上
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なんだとか。
世界で見ると、スロベニアに樹齢300年以上の木があったり、オーストラリアのバロッサヴァレーには、1840年代植樹の樹齢170年以上のシラーズが現役でワインを生産していたり、南アフリカには、「オールド・ヴァイン・プロジェクト(OVP)」という認証制度があり、35年以上の古樹から造られるワインには特別な認証シールが付与されるそう🎖️
比較的新しい樹齢の方が、房数が多くフレッシュな印象。古いと、自然と収穫量が減少することもあり一粒一粒の糖分凝縮量が上がっていき、結果的に色が濃く分厚目のワインができる傾向になるのです。
人間のように寿命はあるのかというと、絶対的なものはないそう。しかし病気にかかってしまったり、気候の変化、または剪定されることで枝先からの病原菌感染、樹液の流れの障害、エネルギー消費、枝葉の喪失による生理的負担などなど、それらの要因が重なると寿命を縮める要因になるそう。
なんだか人間みたいで、より一層愛着が湧いてしまいますね。
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さてオーストリアはここまで。次回からはカナダに移行します🇨🇦木が多くて寒そうな地域、というイメージですがいったいどんなワインが醸されているのでしょうか?たくさん深掘りしていきますので来週もよろしくお願いします!