師匠から受け取った愛を、次の人へ - Nice Grapes 大間さん

大間さんがブドウ農家として歩み出せた理由をたどると、必ず一人の存在に行き着くようです。

それが、大間さんに農業を教えてくれた師匠

農業の知識だけでなく、「どう生きるか」「どう地域と関わるか」を背中で教えてくれた人とのことでした。

 

“教育”ではなく“信頼”

農業の世界では、新規就農はとにかく時間がかかる。

学校に通い、研修をして、やっと独立できるまでに5年、そこから安定するまでにさらに5年。それでは続く人がいなくなる。

師匠はそう考えていたと大間さんは語ります。

だから大間さんにやらせてくれたことは、「まず畑を任せること」。

休みの日に通って学ばせ、しかもアルバイトとして対価を払い、1年後には「この面積を譲るから、独立しなさい」と言った。

制度よりも先に、人を信じる選択をしてくれたと語ります。

 

自分のためじゃなく、地域のために使われる時間とお金

後になって知ったこともありました。

師匠は、新規就農者のために借金をしてまで畑を整備していた

自分の利益を最大化するためではなく、地域が続くために。

「こんなに自分の時間とお金を、

人のために使える人がいるんだ、と思いました」

そのグループからは、今までも一人として脱落者が出ていないんだと大間さんはいいます

それは、仕組みが優れていたからというより、愛があったからだと大間さん。

 

受け取った愛を、次の人へ返していく

大間さんは今、「次は自分がその立場になる番だ」と考えています。

新しく農業を始めたい人が、できるだけ遠回りせず、できるだけ孤独にならずに続けられるように。

師匠がしてくれたことを、そのままコピーするのではなく、自分の世代の形にアップデートして返していく

それが、師匠から受け取った愛への答え。

 

愛とは、条件をつけずに“続けさせること”

師匠は多くを語らない。細かく指示もしない。ただ、いい方向に進むように場を整え続ける。

「あれはもう、愛ですよね」

大間さんの言葉は、照れくさそう。正しさを教えることではなく、人が続いていける環境をつくること

Nice Grapesのブドウ畑には、そんな“受け継がれた愛”が、静かに根を張っています。