静かに、でも確かに“豊かさ”が満ちる店
金沢の住宅街にひっそりと佇むワインショップ〈Wineshop Brücke〉。ドイツ語で”橋”を意味する言葉。
店主の佐保里さんと初めて挨拶させていただいのは、取引をさせていただいてから1年以上経ったあと。

話す言葉の節々から、佐保里さんが大切にしているのは「ワインを売ること」ではなく、「ワインを誠実に伝えること」 だと分かります。
ヨーロッパの食卓で知った“ワインのある暮らし”
佐保里さんのワインの原点は、大学時代のヨーロッパ留学にあります。
他の留学生たちが自然にワインを持ち寄り、食卓を囲む。ワインは特別なものではなく、日常の豊かさの象徴だった。
「ワインって、こんなにも生活の中に溶け込んでいるんだ」そう感じた瞬間から、ワインの仕事に興味を抱いたようです。
帰国後、東京の輸入商社に就職し、大手の造り手たちと出会う。しかし、そこで扱うワインは規模の大きな“ブランド”で、造り手の温度や生活が見えにくい。
転機になったのは2018年。
フランスとスペインの 小さな造り手を訪ねた旅でした。海を越えて日本で飲まれていると知り、涙して喜ぶ作り手たちの姿や情景が目の前で。
その瞬間、佐保里さんの中で一つの軸が固まりはじめたそうです。
「この人たちの誠実な営みを、日本で丁寧に伝えたい。」
愛とは、“どの方向にも誠実であること”
佐保里さんが語る「愛」。
それは情熱的でも感覚的でもなく、静かで芯のある言葉でした。
「愛とは、誠実で居続けること。 作り手にも、お客様にも、ワインにも。」
誠実であるということは、たとえば
- 生産者が好きでも、価格と味のバランスが合わなければ置かない
- どんな小さな造り手でも、良いと感じたら仕入れる
- 届いたワインは すべてテイスティングする
- 作り手のストーリーだけで売らず、味わいの本質で判断する
そして、
「お客様が1ヶ月に一度、あるいは2ヶ月に一度買う大切な1本だからこそ、その1本に誠実でなくてはいけない」
と力強く話す佐保里さん。
また、ナチュラルワインの議論でも流されず、“ブドウづくりこそ本質である”という作り手の信念を尊重する姿勢も印象的でした。
常に“生活者の視点”があることも一つ
佐保里さんの魅力は、ワインを語るとき、必ず 「誰の、どんな暮らしに寄り添うか」 を想像していること。
その想像の幅が広いこと。
・子育て中で、1本を一週間かけて飲む人
・レストランで華やかに楽しむ人
・ゆっくり食卓を囲む家族
どんな人にも合わせられるのは、自分自身が“生活者”としてワインと向き合っているから。
週末に何種類ものワインを開け、家族と味わいながら1週間かけて飲む生活。
その背景が、佐保里さんの“リアルな言葉”を生み出しています。
そして、造り手との心の通った交流や、常連のお客様から絵画を贈られるほどの関係性。
そのすべてが「誠実で居続ける」という佐保里さんの生き方の証です。
Wineshop Brückeは、ワインがある“暮らし方”を教えてくれる場所
Wineshop Brückeでは、色んなことを学べます。 1本のワインの背景にある、土地のこと、家族のこと、哲学のこと。
そして、それを誠実に手渡す店主の存在。
佐保里さんの言葉は、ワインが特別なものではなく“暮らしの豊かさをつくるもの”だと教えてくれます。
大きい生産者さんを知り、小さい生産者にも出会うきっかけがあり、それを誠実に伝え続ける佐保里さんだからこそ”寄り添ったワインのある暮らし”の魅力がすっと体に入ってきます。
また、佐保里さんのご家族がされている「弥三郎」さんでは季節の食事がワインと一緒に楽しめます。
毎回金沢に行くたびに佐保里さんに会うこと、弥三郎さんで季節を感じれることの喜びに出会えます。