日本酒の醸造もしっかり勉強していくことが大切と気づいたので、醸造学的観点から日本酒のことを解読しく企画。
まずは原材料である米についてから。
vol.2 - 米が違うとどう違うのか
日本人には馴染が深いお米。お米には食べる用の飯米と飲む用の酒米っていう2パターンが日本で育てられている印象です。
それらの違いが生み出すものを改めて考えてみたいと思います。
酒米の違いはなにか
酒米(酒造好適米)は、コシヒカリやアキタコマチなどの飯米品種とは少し異なる特徴があり、それらのおかげで酒造りに向いているとみなされるようです。
①大粒で心白発生率がたかいこと
②精米しやすく割れにくいこと
③タンパク質・脂質が少ないこと
④適度な硬さを持つこと
それ以外にも収穫の性能が、などあるようですが味わいには関わらない部分なので割愛したい(ホップでも耐病性が、などよく言われていますが醸造家はもっとピュアなところを意識したほうがいいのかな?と思っています)
- 大粒かつ心白があること - 日本酒はvol.1でやったとおり精米を行い外側を削り取っていきます。なるべく外側を削る余地も残せるお米のほうがよいので大粒のほうが優遇されるようです。心白というのは米に白く見えるでんぷん質のこと。一定の隙間があると光が入り込み乱反射するようで、白く見えるそう。そうした組成である確率が高いお米は、その隙間に麹菌が根を張りやすく、良い麹になりやすいそうですね。
- 精米しやすく割れにくいこと - 1と同じ話。しかし、心白が大きすぎるとあるところから脆くなるようで、高精米には向かないそうです。
- タンパク質、脂質が少ないこと - 削ってもなお多いタイプの米もあるようで、それらは味わいが濃くなりやすい特徴があることから、純米大吟醸などのようなスタイルには不向きなのでは?とされているようです。
ただ、それは結局作れるスタイルが異なるってだけなので、向いてる向いてないはあんまり関係ないような気もします。
- 適度な硬さを持つこと - 今日の勝手なテーマ。硬さ、とは「溶けづらさ」という醪の中で酵素反応を受けづらいことの指標なようです。成分的には疎水性構造なアミロースが多いタイプの米のことを指すようです。
アミロースが多い米はパサパサしていて、水分が入り込む余地があまりないのですね。
硬いとどうなる?
なんで硬いかどうかを議論する必要があるのでしょうか?と疑問に思いますよね。それがどう味に影響するのか、と。
硬いお米というのは先程も行った通り、酵素が働きづらい状態を作り出します。そのため、麹による酵素の働きと酵母によるアルコール生成が同時に行われる日本酒醸造においては、アミノ酸の供給および発酵性糖分の供給がスピードが遅くなることを意味します。
実際に、硬さと酵素の働きやすさの関係は色んな論文で確認されています。
2020年の研究では「もち米と飯米では糖化にかかる時間がもち米のほうが短かった」と再確認されています。これはもち米はアミロース含有量が0%で、非常に「柔らかい米」と認識できます。
タンパク質含有量が豊富だと糖分同士の結合を高め、疎水性を高めてしまう可能性も硬さの要因だとも言われています。とにもかくにも重要なのは、「硬い」と称される米は酵母への栄養供給が遅く、発酵期間が長くなるケースが多いようです。
面白くなってきましたね。
発酵期間が長くなるとどうなるのか?
一般的に発酵期間が長くなるとどうなるでしょうか?
ビールの場合では「貯蔵」と並行している部分もあり、一定期間を超えるまではオフフレーバーの減少に寄与し、丁寧な作りと称される場合もあります。
日本酒ではどうでしょうか。
硬いお米は吟醸香と相関があるように書かれている記事や文体をよく見かけました。なにか関係があるのでしょうか。
vol.1でもやった吟醸香は、米の削りだけじゃなく、低温での発酵にも原因があります。酵母の細胞膜が低温でも流動性を高められるように、酵母がカプロン酸を豊富に作り込み、結果的にそれらがアルコールと反応してカプロン酸エチル(りんご、吟醸香)につながる可能性が高いということでした。
硬さと、低温発酵が関係すると面白いですね。
硬い米と、低温発酵の相関性
どうしても硬さ=吟醸香につながる、理屈がピンときませんでしたが低温発酵ならば可能性はありそうです。
麹による酵素反応がなかなか進まない硬い米は、酵母への栄養供給が遅く、発酵速度が落ちる可能性は十分理解できます。それにより発酵熱が少なく、外部の気温が低いと発酵温度が落ちて、余計に遅くなるというスパイラルの可能性も十分考えられます。
が、それなら高温で発酵させたら良いじゃないか、と思いますね。僕もそうでした。でも調べる限りでは硬い米×高温×長期期間の発酵スタイルはあんまり出てきませんでした。調べ方がわるいのかな。
でも、日本酒はビールに比べるとタンクを開放させる時間も長く、発酵が長期化すると雑菌汚染のリスクもぐんと高まります。そのため、長期間発酵には低温管理をセットにすることも十分納得ができます。
それによりカプロン酸エチルの生成が高まるのではないか?と。
「硬い米が長期間発酵するから、低温で管理するしかないか」
「低温で発酵させたらカプロン酸エチルがたくさんできるな」
「硬い米は吟醸香がたくさん出るな」
という三段論法だったのでは?という説でした。お次はどうしましょう。