東京・経堂にある〈つきや酒店〉。
整然と並ぶボトルの奥に、つくり手の想いを受け取ってきた人の気配が漂っているよう気すらします。
その中心にいるのが、店主の 柱知香良さん。

作り手の温度を、自分の言葉で届けたい
知香良さんの魅力は、お酒の向こう側にある“背景”まで丸ごと手渡してくれるところ。
誰が、どんな土地で、どんな想いでつくったのか。
それを知ることで、1本のお酒が急に“生命のあるもの”になる。
「人が口にするものは、安心して飲めるものであってほしい。だから、つくり手のところまでちゃんと遡りたいんです。」
家族の健康をきっかけに、自然なもの・背景のあるものを選ぶことが生活の基盤となり、それがそのまま酒屋の姿勢へとつながりました。
お酒は“完成品”ではなく、つくり手から預かったバトン。
燗ミードに宿る“探究の愛”
つきや酒店の名物といえば、知香良さんが研究し続けている燗ミード。
温度を上げると香りが開く。酸の出方が変わる。甘さが消えたり、別の顔が出たりする。
その変化に毎回驚きながら、「今日はこんな香りになった」と丁寧に説明してくれる姿は、もうひとつの“愛のかたち”です。何度も向き合い、その魅力を言葉にしていく行為。
継続しなければ得られない実感が、そこには宿っています。
愛とは、“続けること”
知香良さんにとっての愛、迷いはあるけど静かに答えてくれました。
「愛は……続けること、だと思うんです。」
追い続ける、学び続ける、伝え続ける。続けることで、自分の言葉が磨かれ、伝わり方が変わり、お客さんとの関係性も深まっていく。
それは人との関係にも、お酒との関係にも、仕事そのものにも通じる姿勢。
「一度だけでは愛にならない。積み重ねて、継続して、ようやく形になる気がするんです。」
今日も、同じ温度で
知香良さんの愛は、声を張り上げる情熱ではなく、日々の中に置かれた小さな灯りのようなもの。
温度を見つめ、背景を聞き取り、真っすぐに伝え続ける。
つきや酒店には、“続けることでしか生まれない愛”が満ちています。