前略、ソムリエな君(番外編) - アイスミードって存在するの?

おはようございます!先週はアイスワインの世界をスケーティング⛸️

なんでだろう?と思ったことを追求していくことはとても楽しいことだと再認識した時間でした。

今日は前回の記事に書いていた、アイスワインはブドウを凍らせてつくることから、蜂蜜も凍らせてつくったらアイスミードと呼ばれるものができるのか?についてまずは触れてみたいと思います。

そもそも蜂蜜は凍るのか?

前回の学びを振り返ると、「ブドウはまず水分が凍り、糖分が液体に残ります。そしてブドウが凍ると、水分は氷の結晶になりますが、糖分・酸・香り成分は凍らずに液体部分に残ります。」と記していました。

蜂蜜の糖分量は約80%ほど、残りの約20%は主に水分で、その他にごく微量の酵素、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、有機酸などが含まれています。

水分は含まれているので時間はかかりそうだけど凍りそう、というのが私の予想。皆さんはどうでしょうか?

一昔前、私が生まれた頃はまだインターネットがない時代でした。蜂蜜は凍るのか、という問いの答えに辿り着くには、図書館に行って文献をあさったり、もしくは自分で実験してみるしかない。答えにすぐ辿り着けないまでのワクワクやもどかしさをこれから味わうことはあるのだろうか?とふと不安になりましたが、今日はこのまま答えに辿り着きたいと思います🏃♀️


検索用として重宝しているAI、パープレ先生(Perplexity)に聞いたところ、「家庭用冷凍庫(約-18℃)では凍らない、業務用冷凍庫(-20℃~-30℃)では凍る」とのことでした。どういうことでしょうか?その前にまずは凍るとはなにか、について整理します。

凍るって何?

「凍る」とは、液体が温度の低下によって固体になる現象を指します。液体である水が、0℃以下になると固体である氷になることですね🧊


もう少し掘ってみます。水の場合、水を構成する分子が自由に動き回っている液体の状態から、温度が下がることで分子の動きがゆっくりになり、やがて規則正しく並んで固体(氷)の形に変わるのです。これが「凍る」という現象です。


水を構成する分子とは、「O」という酸素分子と「H」という水素分子が結合した「H₂O(水分子)」。


そして水分子の水素(プラス)と別の水分子の酸素(マイナス)の部分的な電荷(δ+、δ-)がくっつく力が生まれます。これを「水素結合」と呼び、この水素結合が起こり、固定されることで凍るという現象を引き起こしています。下の図のイメージです!

引用元:https://rikeilabo.com/hydrogen-bonding

液体の状態でも水素結合は起こっているのですが、0度以上の温度では、水分子は活発に動いているので、くっついては離れての状態が保たれています。水がどんな形にもなれるのはこのことから言えます。例えると水分子は「スケートリンクで滑る人々」。くっついたり離れたりしながら自由に動き回っているのです。

結局蜂蜜は凍るのか?

話は蜂蜜に戻ります。凍るというのは、水分子の間で水素結合が起こった状態を指すことがわかりました。そんな凍結の主役「水分子」ですが、蜂蜜の水分はわずか20%しかありません。

水分子以外の、糖分子(例:ブドウ糖 C₆H₁₂O₆)はこの水素結合を邪魔します。

[水分子] [糖] [水分子] [糖] ... (ランダム配置)

この状態では水分子が水素結合で規則正しく手を繋いで固定されないので、「凍結」という状態になれないのです。(水に砂糖や塩などが溶けている水は、純粋な水よりも低い温度でないと凍らず、この現象は「凝固点降下」と呼ばれます)

具体的には、糖分子が水分子の動きを阻害して氷の結晶形成を妨げるだけでなく、そもそも水分量が少ないため水分子同士の結合機会が限られるという二重の効果が働きます。


この現象を説明する化学的な原理が「凝固点降下の式」(ΔT = K_f × m)です。

ここでΔTは凍る温度の低下幅、K_fは物質固有の定数(水の場合は1.86)、mは溶質の濃度を表します。蜂蜜の場合、糖濃度が非常に高い(mが大きい)ためΔTが大きくなり、凍結温度が著しく低下するのです。

実際、家庭用冷凍庫の温度(約-18℃)では凍らず、粘度が増すだけにとどまるそう。粘度が増すのは、低温により分子の動きが全体的にゆっくりになることと、わずかな水分の一部が凍り始めることで、蜂蜜全体の流動性が低下するためです。

最初に凍る、としていた業務用冷凍庫(-20℃ ~ -30℃)では、水分のみが部分的に凍結します。糖分はガラス状固体(非晶質)となり、完全な氷結晶にはなりません。蜂蜜全体が均一に凍結するには-40°C近くが必要なようです。。この温度では結晶化ではなく、ガラス状に固化すると言える状態。(北極や南極、シベリア、カナダ北部などの極地や高緯度地域では、冬季に-40℃以下まで気温が下がることがあるらしい)

結論として蜂蜜は水分が凍るという意味では凍りますが、その条件は厳しく、日常環境では実質的に「凍らない」と言えます。

では仮に-40度以下の環境に置いて蜂蜜が凍ったとしたら、ミードは作れるのでしょうか?

アイスミード、Exist?


そもそもアイスワインの魅力は、ブドウの糖度が通常時の2倍くらいになって発酵させるとのことでしたね。ミードを作る工程では、その糖度の高さゆえに蜂蜜と水を混ぜて、糖度を落としてから発酵させていました。

水分を除去して蜂蜜の糖分の部分だけにした蜂蜜を使ったとしても、結局混ぜる水の量が増えるだけで、結局アイスミードというものは存在しえないんじゃないか、というのが私の予想です。

さていったいどうなのでしょうか?

調べてみたところ、アイスミードというカテゴリーは存在しないようです。ただアイスワインのように、甘みがよりありアルコール度数が高いミードというのは存在するようです。その名は「ヤドヴィガ」。

ヤドヴィガは、ポーランド王妃「ヤドヴィガ・アンデガヴェンスカ」の名を冠しており、かつては王侯貴族だけに振る舞われていた伝統的な高級ミードなんだとか。

通常のミードは、蜂蜜1に対して水2~3の割合ですが、「ヤドヴィガ」は、なんと蜂蜜3:水2!通常8〜10年くらい熟成期間をとっていたそう。技術の進歩で6年くらいになったそうですが、それでも6年。アルコール度数は16~18%、糖度は40%以上のとっても甘いミードです🍯ミードを作る前の状態=マストよりも甘い液体!と岡田くんは驚いていました。

一般的な清涼飲料水が10%前後、濃縮タイプの野菜ジュースなので高いものでも20%ほどなので40%はもはや飲み物ではなく、練乳やシロップのようなイメージでしょうか。

750mlで7,000円程度。岡田くんの誕生日プレゼントに買ってみようかな。

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