週末という事でひとり焼き鳥をした後、ミード片手に書いております。
ふいに中国に留学していた頃、関西アピールをしたかったのかなぜか「まいど!」という挨拶をしていた事を思い出して、恥ずかしかったなと思う気持ちと同時にポップコーンとお酒が止まらない状況です。
それはさておき今回はちょうど最近仕込んだということもありブラッドオレンジ(以下、BO)について調査してまいりました。
前回のバニラの話がまだ終わってなかったのですが、BOについて調べていたらかなり白熱してきたので熱量そのまま今回はこちらで行きたいと思います。
ブラッドオレンジはなぜ赤い?
ブラッドオレンジの一番の特徴といえば赤いってことですよね。
ではなぜ赤いのかということですが、それはアントシアニンがたくさん含まれているからです!
なんてオチで終わると面白くないですよね。
ちゃんと調べてきました。
本場イタリアの文献を調べていると、「ブラッドオレンジの起源」なる論文が出てきました。これによるとブラッドオレンジの赤色は「Ruby」という遺伝子が原因になっているそうです。なんかかわいいですね。
さらにアントシアニンが作られるには寒さが必要だと書いていました。
ん?寒さが必要なんか。どういうこと?
ってことでまたまた調査を進めると「紅葉」に行きつきました。察しの良い方はお気づきでしょうか。
そうですブラッドオレンジが赤くなるのと紅葉やりんごが赤くなるのはどうやら同じ原理なのです。
紅葉では、寒くなると光合成によって作られた糖分が枝にいかず葉っぱに集まり、そこに日光が当たり葉緑素が分解され、糖分を含む化学反応が起こってアントシアニンが作られるそうです。
そして紅葉が始まるためには夜間の最低気温が5度以下になる必要があるみたいで、これは夜の気温が高いと昼に光合成により作った糖分を消費してしまうからだそうです。
つまりアントシアニンが作られるには寒さが必要であり、ブラッドオレンジが赤くなるには夜間に冷えることが重要だということです。
柑橘を使ったミードの発酵で感じるバンドエイドのような香り
夏みかんのピューレを使ってミードを作ったことがあります。
ピューレ自体はとてもいい香りだったのですが、発酵中の液体からは薬品のようなバンドエイドみたいな香りが強く感じられました。
それ以降も別の柑橘を使った時にこの香りを感じたことがあり、柑橘の発酵=薬品の香りという公式が自分の中でできてしまったほどです。
そんな中でブラッドオレンジについて調べているとこの現象のヒントになりそうな研究結果を見つけました。
それが、モロという品種を収穫後60日以上貯蔵するとフェノール系の異臭がしたというものでした。詳しくいうと、ブラッドオレンジに含まれるヒドロキシ桂皮酸が酵素により分解されてクマル酸とフェルラ酸が劇的に増え、その結果薬品臭の原因である4-VGと4-VPが発生したということです。これらは全てポリフェノールと言われる物質です。
この4-VG(ビニルグアルコール),4-VP(ビニルフェノール)はワインやビールといった醸造酒においてオフフレーバーとされている香りの原因でもあるんです。
これらはクマル酸やフェルラ酸が酵母により変換されることによって発生します。
つまり柑橘にはクマル酸やフェルラ酸のもとになるヒドロキシ桂皮酸が多く含まれていて、その結果酵母によって通常より多くの4-VPといったフェノール類が発生するのではないかということです。
なんとなく薬品臭の原因がわかった気がします。
要はバンドエイドの香りの原因になる物質が柑橘には多いということです。
じゃあどうやってこの香りが出ないようにするのかというのが醸造家の仕事ですね。
まず考えられるのがこのようなフェノール類を作り出してしまう酵素を持たない酵母(POF-という)を使用するということです。この性質を持つワイン酵母でいうとLalvin ICV Opale、Lalvin V1116といった酵母があげられます。
この香りをどれぐらいの量で人が感知するかというと、4-ビニルフェノールで 1.5 mg/L 、 4-ビニルグアイアコール で 0.38 mg/L だそうです。これらが出やすいという甲州ワインを用いた実験では様々な市販の酵母を用いて4-VPと4-VGの量を調べた結果、pof-ではない酵母の場合ほとんどこの基準値を超えていました。
次に考えられるのが、柑橘の皮や白い部分を極力使わないようにするということです。皮や白い部分(アルベド)にはポリフェノールがたくさん含まれているので、これを使わないことで原因となる物質を減らすことができるのではないかということです。
どちらも実際に試したことがないのですが、薬っぽい香りを出したくない場合はPOF-の酵母を使うのが良いと言えそうです。
ブラッドオレンジを使った醸造
ブラッドオレンジの特徴といえばアントシアニンを豊富に含んでいることでした。この特性を活かすことを考えると赤ワインのような作りをするのはどうでしょうか?
赤ワインといえば果皮を粉砕し、それごと発酵させることが特徴です。
そのため白ワインに比べ10倍ほどポリフェノールが多いとも言われています。
ということは先ほどの話でいうとポリフェノールが多いならばフェノール臭がしてしまうのではないかと思ってしまいますよね。
でも赤ワインにおいて4-VPや4-VGが検出されることはほぼないそうなんです。
なんでやねん。
って感じですが、それには理由があって、赤ワインに含まれるプロシアニジンやカテキンがそもそもの原因となるヒドロキシ桂皮酸を分解する酵素の働きを阻害するからなんです。
つまり赤ワインでは4-VPや4-VGに繋がる物質が発生しないということです。
そしてブラッドオレンジは他のネーブルオレンジなどに比べて強い抗酸化作用を持っています。
これはもちろんアントシアニンのおかげなんですが、ワインなどにおける酸化というのはフェノールと酵素の反応のことです。
つまり抗酸化作用が強いブラッドオレンジは赤ワイン同様に、ヒドロキシ桂皮酸を分解する酵素の働きを阻害するのではないかということです。そう考えるとブラッドオレンジを使った醸造ではフェノール臭が出ないのではないかと考えられます。
ただ赤ワインにもフェノール臭が発生する場合があって、それはブレタノマイセスという菌が働いた時に4-EPや4-EGという物質が発生します。
これらの香りは若干違いはあれど基本的には薬っぽい香りだそうです。
ですのでブラッドオレンジを使う場合も、雑菌汚染には気を付けるべきだといえそうです。
赤ワインを作る時のように皮や果肉ごと発酵させてみるのも面白そうですが、めちゃくちゃ苦くなる未来が見えるのでいつか暇な時に実験したいと思います。