Brewer's Note 〈This is it - soba〉

This is itは、ミャンマーの蜂蜜を使った低アルコールの発泡性ミード。

同じようなプロファイルで蜂蜜を変えたver.をずっと作ってみたかったのですが、どうしても軟派なマーケティング先行型みたいな作品つくりになりそうでピンとくるまで避けちゃってました。

色んな蜂蜜を食べる経験だけ増えていって、美味しすぎる蜂蜜は基本的にもっとどっしりとした作品にしがちに。
(シオミードとかのバレルエイジみたいな)

そんな折に、とっても仲良しの同い年料理人の涼ちゃんに「蕎麦とミードのイベントしてみない?」と誘われて。
せっかくなら蕎麦の蜂蜜使ったミードと一緒に蕎麦食べるとか面白いかな?と思って、ようやく重い腰があがったわけです。

蜂蜜は北海道の蕎麦蜂蜜100%。
蕎麦の蜂蜜ってベッコウ飴とか、湿布とか、獣っぽい匂いがすごくて。百花蜜でいうと秋のセイタカアワダチソウが入った蜂蜜みたいな。両手を叩いて美味しいとはいえないんですよね。

でもなんかミードにしたら結構いけるんちゃうかな?と見切り発車。
兎にも角にも蜂蜜が違ったら味は全然違うのははっきり分かるプロダクトになったのかなあと。

〈 This is it - soba - 〉

ミャンマー産の百花蜜を使ったThis is it はANTELOPEの定番商品。その蜂蜜を全て北海道産の蕎麦蜂蜜に変えてつくったver. です。

煙や、湿布、焼いたみかんのような香りの主張が強い蕎麦の蜂蜜。完熟した柿を少し発酵中に混ぜ込み柔らかさを足しました。蜂蜜の違いによって変わる味わいの変化を楽しんでもらえたら嬉しいです。

蕎麦と一緒に楽しめたらいいなと思ったのですが、おろし蕎麦ならいけそうです。


〈Static → Dynamic〉

どうしても安定志向を求めたくなってしまうのは大人になったからなのでしょうか。ミャンマー蜂蜜への愛情がそうさせたのか、醸造の深みを知って怖くなったからなのでしょうか。
何にせよ、色んな蜂蜜を使って醸造をしていくというシンプルなミードメーカーとしての矜持が弱まっていたかのように感じます。

静的な思考から動的な思考へのチャレンジをようやく試みてみました。
蕎麦蜂蜜を使ったThis is itです。
ラベルは同じもので色違いにしてみたんですが、思ったより色が違わなくてやばそうだけど、まあいいでしょう。

どうせならなるべく違いがはっきり出る蜂蜜をチョイスというのもとに挑戦してみました。かなり癖がつよく、同じような香りの方向性で完熟した浜松の柿も少しだけタンクに入れて醸してみました。


〈Tasting Note〉
度数は6%。はっきりとしたフェノール香や少しピリジンを感じるのはミードならではでしょうか。ベルギービールとワインのちょうど間のような、すこしラフロイグのような個性もあるような。なんとも不思議ですが、燻製料理や癖のある魚料理と合わせてみると面白いです。

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スタイル:Traditional Sparkling Mead
ABV(アルコール度数):6%
炭酸:あり
内容量:500ml
原材料: 蕎麦蜂蜜(北海道産)、柿
甘さ(10段階):7(Sweet)
飲み頃温度:よく冷やして(4-8℃)
ペアリング:癖のあるチーズ、燻製、熱の入った魚料理

〈Mead making〉
そば蜂蜜と水を全量混ぜて発酵タンクへ移送。酵母を添加して18℃で発酵。発酵中期から工場で追熟した完熟柿を全量ピューレにして投入。発酵終了後、柿を引き抜き火入れ。ガス付けしてフィニッシュ。