僕の愛は、量が決まっている - 阪急阪神百貨店 山口さん

今回お話を伺ったのは、阪急阪神百貨店でバイヤーを務める山口健生(たけお)さん。

お付き合いが始まったのは2023年。百貨店でミードを扱っていただくことに少し緊張していましたが、山口さんはそんな緊張を解いてくれる優しく包容力のある方。



そんな山口さんは何百種類以上のお酒を販売していますが、山口さんが届けたいのは、ボトルの先にある作り手の「愛」。年に数回、「偏った愛」と書いて「偏愛」と名付けたイベントを開催し、自身や一緒に働く仲間の方々もそれぞれ自分の「愛」が溢れる商品を説明・販売するイベントを開催しているそう。

そんな山口さんにとっての「愛」とは、一体どんな形をしているのでしょうか。


仕事で愛を感じる瞬間とは?
つくり手から受け取る「愛のバトン」

インタビューをする前は、「答えられるかな」と少し戸惑っていた山口さんでしたが、この質問をするとすぐに「作り手に会った時」と答えてくれました。

「美味しいお酒を作っている人たちが、楽しそうに自分たちのプロダクトについて熱く語るのを聞いていると、こちらも愛しい気持ちになります。すごいな、かっこいいな、って。」

つくり手が、どんな想いで、どんなこだわりを持ってこの1本のお酒を作ったのか。その顔が浮かぶことで、1本のお酒への愛着は格段に深まる、と山口さんは言います。

「僕らのお店からは、何も生まれないんです。だから、作り手から受け取った『愛のバトン』を、僕らの言葉で次のお客さんに渡していく。それが僕らの役割だと思っています」



「愛のタンク」は循環する

では、山口さん自身にとって「愛」とは? 「そもそも自分に愛がないと、何にも関わっていけない」と前置きした上で、彼は究極の定義を語ってくれました。

「愛とは、『嫌われてもいいや』って思えること。相手にどう思われても、自分はきっと一生、その人やモノを嫌いになることはないだろうなっていう確信ですね」

さらに興味深いことに、山口さんの愛は無限ではありません。

「僕の愛って、タンクみたいに量が決まってるんですよ」 だから、誰にでもは注げない。量が決まっているからこそ、注ぐと決めた相手には真剣に向き合えるのです。

愛の量がタンクみたいに決まっている。そう語る姿に、作り手への誠実さを感じずにはいられません。きっとその「愛のタンク」は、放出されて減るばかりではないはず。作り手たちの情熱や想いが注ぎ込まれ、また誰かへと手渡されていく。そうやって、愛は常に循環しているのでしょう。

つくり手から受け取ったバトンを、愛を込めて次の手へ。 私たちも山口さんのタンクを常に満タンにできるよう、これからも愛を届け続けたいと思います。