今日から、ミードを素敵に楽しめるお店を紹介させて頂く企画をスタートしてみることにしました。
「ミードの歩き方」
分からない土地を旅するときに頼りにしちゃう本のように、僕たちも聞き馴染みのないお酒の楽しみ方を伝えられるような、そんな企画にしていきたいと思います。
ミードの楽しみ方だけじゃなく、お店の素晴らしさや、ペアリングの素敵な例を紹介していきたいと思います。第一弾は、京都の「お皿とスプーン」さん。お料理、雰囲気、多田さんご夫婦の醸し出す優しい雰囲気、どれを取っても本当にGoodなお店です。
@osara_to_spoon
1. Access
京都駅から地下鉄で1駅の場所にある五条駅が最寄り駅。8番出口から西に徒歩3分。ふわっとした緑に囲まれた外装と、白いべスパが目印。
2. History
2020年から間借りで週末だけ営業してきたお皿とスプーンさんは2021年に実店舗を構えられました。
「ゆったりとした空間でレコードを聴きながら、お酒を飲んでごはんを食べていただける店」は多田さんご夫婦の2人だけで切り盛りされているお店。だからいつ何時行っても優しい雰囲気と優しい音楽が迎えて入れてくれます。
「お皿とスプーン」という店名には、レコードを意味する「お皿」と、食事を連想させる「スプーン」が込められています。
1970年代のイギリス製グッドマンのスピーカーから、多田さんチョイスの音楽が流れる空間。スピーカーとは、京都上鳥羽のオーディオ専門店での偶然の出会いだったそうです。多田さんが好んで流す70年代の音楽は、同時代のスピーカーで聴くと最高の音が出るのだとか。まるで運命的な出会いですね。
「レコードには特別な贅沢さがあるんです」と多田さん。ボタンひとつで音楽が聴ける時代に、わざわざレコードショップに足を運び、その日の店の空気に合わせて一枚一枚選んで流す。次の曲を聴きたければ、手作業でレコードを取り替える必要がある。その一連の動作に、むしろ贅沢さを感じるのだそう。
インタビューに訪れた日は、キリンジの「エイリアンズ」が流れていました。この曲が終わってから帰ろう、と思わせる音の心地よさ。曲を聴いていた頃の記憶が蘇り、様々な想いが胸に込み上げてきました。
3. Food & Drink
お皿とスプーンさんはその時の旬なお野菜や果物を中心としたお食事を出されています。前菜の盛り合わせはどれも野菜やハーブの良さがぎゅっと詰まっていて、目で楽しい、味わって楽しい、そんなヒトサラです。ドリンクはワインを中心にクラフトビールや僕たちのミードもラインナップされています。3月の来訪時には「The Last Supper」と「What Churchill Said」が、11月には「This is it」と「Giou -祇王」がオンメニュー。あえてミードの説明は詳しく書かずに、お客様との会話を通じてその方にぴったりな楽しみ方を提案されます。
食中酒としては普段お酒を飲まない方やお口直しに、乾杯酒としてはスパークリングワインの代わりに、そして締めくくりにはデザートとのペアリングと。多田さんの丁寧な提案のおかげで、さまざまな場面で活躍の場を広げています。お客様1人1人に寄り添いながら、ミードの新しい魅力を見出してくださる多田さんの姿勢に、深い感謝の気持ちでいっぱいになりました。
4. How to “Walk”
お皿とスプーンさんではミードとのペアリングを2種類ご用意していただきました。
『The Last Supper × 真鯛と日向夏のマリネ』
└乳酸による爽やかな酸味とプラムのような円熟したフルーツの香りが特徴的なThe Last Supperとペアリングしていただいたのは、真鯛と旬な日向夏で作ったマリネ。梅酒に漬け込んであった梅肉を加えることで、お互いの香りに歩み寄りを持たせてみたとのこと。真鯛の切り身よりも大きな日向夏はとってもジューシーで、飲み込んだあとも爽やかな香りが残り、柔らかな酸味がThe Last Supperの酸味とぴったし。ふわっとかかった葉山椒もミードと相性が良きでした。
『What Churchill Said × ベニエ -ルッコラ、マッシュルーム、ペコリーノチーズ-』
└ベニエとは軽いドーナッツのような料理で、パリッとした表面の皮と中のもっちりとした少し甘みのある生地がとても美味しいです。お酒にも合うようにと添えられたハーブとチーズ、そして一切れのライム。ライムをきゅっと絞ってベニエを一口ほおばると異国の風が吹きました。異国に行った経験がほとんどない僕でも分かるくらいのそれでした。穀物由来の甘みがある生地に甘みのあるミードを合わせるのがとても気持ちよく、揚げ物とミードの可能性にとてもワクワクしました。
2024.11.28追記✍️
『Giou - 祇王 × 里芋のゴルゴンゾーラチーズ、蜂蜜がけ』
└里芋といえば、煮っ転がし。母の味が好きで、実家を思い出してしまう食材の1つ。そんな里芋にゴルゴンゾーラチーズと蜂蜜がかかった贅沢な1品。里芋のふんわりとした食感から始まり、ゴルゴンゾーラの塩気と旨味が口いっぱいに広がり、最後に蜂蜜の優しい甘みが全体を包み込んでくれます。
合わせたのは、Giou -祇王。定番ミードの中では、一番ドライで甘さ控えめなミードですが、このペアリングでは蜂蜜の甘みをしっかりと感じる新しい一面を発見。普段は飲み切るのに時間のかかるGiou -祇王ですが、この組み合わせなら1本余裕で開けてしまいそうな、そんな満足感のあるペアリングでした。
そこにかかっていた蜂蜜は「ヤツオハニー」の「初夏」。富山県八尾町で、多田さんの親戚が大切に育てた蜜蜂たちが集めた天然の生はちみつです。多田さんは常に一番合う素材は何かを考えて、一つ一つのお料理に向き合ってらっしゃいます。今回のミードと蜂蜜の組み合わせも、その繊細な味わいのバランスが絶妙で、まさに多田さんならではの心遣いを感じる一皿でした。
5. Open
15:00-22:00
水曜定休+不定休
1/26〜2/19 〈冬季休暇中〉
2/26.27 3/5.6.12.13
詳しいお休みはお店のインスタグラムをご参照ください。
お皿とスプーンさんでは季節ごとに旬な食材をご用意されていますので、時々のメニューでミードに合う食事に出会えるのではないかと思うと京都に行く楽しみが本当に増えます。谷澤は大学生のときに五条という土地でご飯を食べたことがありませんでしたが、帰り道に道の間から見える京都タワーに性懲りもなくウフフとしました。
どこを切り取っても絵になる空間、選び抜かれた音楽、心のこもった料理、そして多田さんご夫婦の醸し出す温かな空気。全てが見事に調和した「お皿とスプーン」は、ついつい長居したくなる、そんな特別な場所です。
少しはミードの”歩き方”を伝えられたら幸いです。次はどのお店に歩いてみようかな。