前略、ソムリエな君 - オーストリアの有名品種:グリューナー・ヴェルトリーナー

おはようございます!今日は先週に続き、オーストリアワインの世界に浸ります🇦🇹写真はザルツブルグの風景。毎年7月下旬から8月いっぱいまで行われるクラシック音楽のお祭り「ザルツブルグ音楽祭」が開かれる街。

この時期には街全体が音楽祭の雰囲気に包まれて、祝祭ムードに。演者への敬意を示す文化もあり、みんなそれぞれの最高のオシャレをしてコンサートへいくあの特別感は、音楽が好きじゃない人もぜひ一度味わって欲しい空気感です。小さな街なので歩いて散策も楽しいですよ。(あのモーツァルトが生まれ育った街でもあり、彼の生家もあったりします!)


つい、ザルツブルグへの愛が溢れてしまいました。さて、ワインの話に戻ります。

先週触れましたが、オーストリアのワインは白ワインが全体の7割。その中で最も多くつくられているブドウ品種が「グリューナー・ヴェルトリーナー」。「グリューナー」はドイツ語で「緑色」を表し、ブドウの葉や果実の緑がかった色合いに由来します。

一方「ヴェルトリーナー」の正確な由来はわかってないそう。「サヴァニャン」というヨーロッパで古い歴史を持つ白ブドウ品種と、ブルゲンラント州のザンクト・ゲオルゲンで発見されたブドウ樹との自然交配によって生まれたオーストリアの固有品種です。


オーストリアでの主な産地は、下の地図の黄色いエリア「ニーダエスタライヒ州」。

この州の栽培面積の47%がグリューナー・ヴェルトリーナーです。フランスのブルゴーニュ地方のシャルドネは、特定地域の約51%、お隣ドイツのリースリングは約62%を占めるなど、他にも地域に対する割合が大きなエリアはあるものの、世界の主要ワイン産地の中でもトップクラスの単一品種集中度と言えそうです。

同じ地域であれば100%同じブドウが作られてもおかしくないのでは?と思いましたが、なぜそうではないのでしょうか?

例えばこのニーダエスタライヒ州は日本の岩手県ほどの広さがあり、滋賀県の約5倍です。滋賀県も琵琶湖の北側、南側で気候が違うのですが、確かに5倍の広さがあるのであれば気候が違うことも納得できます。実際、ニーダエスタライヒ州の中でも気候、そして土壌の違いがあります。

またワインスタイルの多様性を保つためや、消費者の嗜好に合わせるために違う品種が栽培されることが一般的なようです。

そんなグリューナー・ヴェルトリーナーのワインを今週はテイスティングしてみました。

■今週のテイスティングレポート
ペーター&パウル グリューナー ヴェルトリーナー 2023 | ヴィンツァーホフ・ホーク

このワイナリーが位置するのは、先ほど触れたニーダーエスタライヒ州。先週紹介したロイマーさんも同じですね。調べてみると車で20分くらいの距離にあるご近所さん。私の大好きなウィーンの北西部、ザルツブルグからはちょっと離れてますが北東に位置しています。

1640年に創業した歴史あるワイナリーWinzerhof Hoch(ヴィンツァーホフ・ホーク)。2008年から全ての畑でオーガニック栽培をはじめ、2015年には「BIOS」という、EU圏内で認められているオーガニック(有機)認証機関の認証を取得。この認証があることで、ワインがオーガニックであることの信頼性が高まり市場からの信頼性が高まります。裏ラベルに認証マークがしっかりと印字されていました🌱

ーワインのオーガニック栽培とは?
化学肥料や合成農薬、除草剤、遺伝子組み換え技術などを使わず、自然由来の方法でブドウを育てる栽培方法。

このオーガニック栽培に力を入れているのがオーストリア。2023時点の数字ですが、国の畑においてオーガニック認証済みの比率が高いことがわかります。参考までに数値を共有します。
===
・オーストリア:24%(10,432ha)
・イタリア:15%(2023年時点で世界最高水準とされていたが、オーストリアがそれを上回った)
・フランス:14%
・スペイン:13%(ただし、絶対面積は世界最大)
・ドイツ:9%
===
なぜオーストリアでこんなに割合が高いのか?については、とっても気になるのですが、また別の機会に触れたいと思います🔍


さて、ここで気になるワインのテイスティングレポートを。

・外観:澄んでいて、薄くて淡い黄色。さらっとしていて、軽快な印象。

・香り:フレッシュでリンゴ、白桃のような香り。花束に顔を埋めているようなお花のような香りも感じる。複雑さというよりかは、きゅっとまとまりのある香り。

・味わい:アタックは強くなく、まろやかな口当たり。直線的でシンプルな印象。口に広がるとはつらつとした酸味が一気に広がり、苦みはほぼ感じない。そして余韻にはブドウのようなリンゴっぽさもある甘みがじんわり残ります。この甘みがじんわりと残る感じは、ロイマーさんのワインを飲んだ時と同じ感覚でした。オーストリアのこの地域のブドウの特性を想像させてくれて、とても興味深い体験でした。

・合いそうなお料理:中華料理の油感や、白身魚のカルパッチョが合いそう。あとはオーストリアの郷土料理「ウィンナーシュニッツェル」が絶対あう!



もしくはこのリンゴ感と合わせて、「アップルシュトゥルーデル」というアップルパイのような、焼き菓子も合いそう。

・価格:3,300円(税込)/750ml

ーーー

今回は名古屋の覚王山というエリアにあるワインショップ「カーヴ ド サンシビリテ」でワインを購入。店主の長野さんと会話しながら楽しく購入しました。

オーストリアワインは酸味が強いのが特徴で、長野さんの印象だと日本ではあまり好まれないのだとか。これは興味深い点だと思い、少し掘り下げてみました。

「日本人は酸味が苦手?」と単純に考えがちですが、実はそうとも言い切れません。和食には酢の物やお寿司など、酸味を活用した料理が数多く存在します。違いはその「使われ方」にあるようです。



日本料理における酢の使い方の特徴は、単独で強い酸味を主張するのではなく、砂糖や塩、だし汁などと組み合わせることで「調和した酸味」に仕上げること。寿司酢は砂糖と塩を加えて酸味を和らげ、酢の物も同様に他の味と絶妙にバランスを取ります。

つまり、日本人の味覚は酸味そのものを避けるというより、「調和した酸味」に慣れているため、グリューナー・ヴェルトリーナーのような「前面に出た酸味」には比較的馴染みが薄いのかもしれません。

この話はあくまで私の調べた範囲なので、いろんな意見があると思います。またプロの方にお話を聞きたいな🦻

話を戻すと、オーストリアワインの酸味が強い理由は、冷涼な気候にあります。日射量が少ないと光合成が比較的活発でなく、糖度が高まりにくい一方で酸の代謝も盛んではないため、相対的に酸が高くなるのです。

EUの生産地では気候区分として「Zone」があります。オーストリアはZone Bとなり、Aが最も冷涼、C Ⅲが最も温暖。比較的冷涼な地域ということがわかります。

「でも価格の高いオーストリアワインはもうちょっと甘みを感じるんだよね」と長野さん。その理由を尋ねると、興味深い説明をしていただきました。

高品質ワインでは収量制限(一本の木に実る房の数を減らす栽培法)が行われることが多く、ブドウの木は光合成から得た栄養・糖分を少ない房に集中させることになる。その結果、糖度の高いブドウが収穫でき、発酵後も残糖分が多くなるため甘みを感じやすくなるのです。また収量が減ることで価格も自然と高くなる—なるほど、「高価格=甘み」の関係が腑に落ちました。

長野さんにワインの勉強をしていることを話すと、1人で飲んでちゃダメだ!と。会社の人とワイン会を開いていろんなワインを飲むべきよ、とのことでした。これはワイン会を開催するしかない、ということでいつかの記事でワイン会のレポートにしようと思うのでお楽しみに🍷

突然の来店にも関わらず丁寧に対応していただいた長野さん、ありがとうございました!

コメントを残す

・メールアドレスの登録は必須ですが、コメント欄には表示されません

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。