梅の花が咲くのを見れば春を感じるし、くらげのニュースを聞けば夏が来たのを知るし、金木犀の香りがすれば今年も半分が終わったかと少し切ない気持ちになるのが日本人の性かもしれません。今年はそのときの香りをぎゅっとボトルに詰め込んだミードを作りました。
また、このミードには金木犀以外にも愛媛県は宇和島・宮本農園さんの「宮川早生」というミカンを使っています。
色んな想いが乗っかった1本です。ふわっと力が抜けるような香りと優しい甘み、柔らかいガス感です。お風呂上がりにちょっと良いグラスを用意してミードを飲む夜も、、悪くないかもです。
〈Uwajima→Yasu〉
今年は30年に1度の旱魃と言われるほど、雨が少なかった宇和島。それに加えてアラレの被害が出たそうです。
本来なら11月頭に収穫する予定のミカン。
雨を待ち、旬を待ち、一番美味しい時期を待つ。
農家の宮本さんの判断を最優先し、一番美味しいときに送って頂きました。届いたミカンは「小さな巨人」、そう表現するより他ないほど清く輝いて見えました。届いたその日が酸味があって一番美味しい、と宮本さんが教えてくれたのでその日のうちに100kgのミカンを手絞りしました。
香りは上品で柔らかく、酸と甘みがぎゅっと詰まった「宮川早生」
その果汁をたっぷりとミードと混ぜ合わせ瓶詰めしました。
〈Tasting Note〉
フレッシュな金木犀を浸漬させたミードに宇和島の蜜柑を加えて香りの層をつくりました。優しい甘みに何層もの香りのレイヤーがあり、強めの炭酸をつけて酸も感じやすい作りにしています。
スタイル:Speciality Mead
アルコール: 8%
pH: 3.51
残糖: 55.0g/L
内容量:500ml
「秋」の終わりに思いを馳せながら、大切な人とテーブルを囲む時間のきっかけに。ほっと一息つきたい時にも寄り添ってくれる1本です。岡田くんのおすすめは、豚の角煮とのペアリング。
〈Mead making〉
発酵はとても珍しく乳酸菌のみでの発酵を行いました。厳密に言えば、添加したのは乳酸菌のみ。高温で放置して乳酸が十分に出たらイーストをピッチしようと思っていたのですが、なかなか酸が伸びずしばらく放っておきました。
すると、予想より糖分の消費が多く、アルコール出てる!ってなったのが始まりでした。
結果的に軽やかな酸味と軽い発酵感が金木犀とみかんの淡く上品な香りをそっと包み込んでくれました。発酵後期に、ハンドピックしたフレッシュな金木犀を0.85g/L投入して、4週間の熟成。あとはいつミカンが届いてもバッチコイの姿勢。
ミカンが届いたら、その日にうちに手絞りして、タンクに投入。その日のうちに火入れを行い、ガス付け。瓶に詰めました。
今年の貴重な宇和島のミカンをフレッシュな状態を保ちつつ、皆さんにお届けできればと想い、この仕込みにしました。瀬戸内海を思い浮かべ、ぜひ1杯どうでしょうか。