おはようございます🇮🇹これまで教本通りに、国の順序でワインの勉強を進めてきましたが、今回はちょっとブレイク。他の本も読んでみたくなったのです。
そこで出会ったのが『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』。タイトルに惹かれて、思わず手に取ってしまいました。(ちょっと背伸びしたいお年頃)
嬉しいことに、今絶賛勉強中のイタリアワインに関する記述を発見。読み進めていくうちに、思わず声を出して笑ってしまったエピソードがありました。それはガヤファミリーのエピソードです。
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「アンジェロ・ガヤは、突如バルバレスコの畑からネッビオーロ種(イタリア品種)を引き抜き、フランス品種のカベルネ・ソーヴィニヨンを植えています。」
「何よりも驚きを隠せなかったのは、父親のジョバンニでした。彼は「なんて残念なことを(イタリア語で「ダルマジ」)と嘆き悲しみました。」
「ガヤはその父親のお澪をワインの銘柄として命名し、こうしてカベルネ・ソーヴィニヨン主体の「ダルマジ」が誕生したのです。」
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- 引用元: 『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』
当時のイタリア、特にこの舞台のピエモンテ州では、ワインづくりにおいてフランスをライバル視しており、イタリアの土着品種を使用した独自の醸造法を貫いていた時代だったようです。
そんな中で全部引き抜いて植え替えるってすごいことなのに、お父さんは嘆き悲しんだだけで、さらにそれを銘柄として名付けるって、「どないやねん!」って。漫才のような展開に笑わずにはいられませんでした。
でも、「なぜアンジェロはそんな大きな決断をしたんだろう?」と気になりました。そして、「お父さんの反応はそれだけだったのか?」という疑問も沸いてきました。今日はこの2つについて深掘りしてみたいと思います🔍
1. ガヤファミリーとは?
1859年にジョヴァンニ・ガヤ氏が創業し、現在では「イタリアワインの帝王」とも呼ばれる存在のワイナリー「ガヤ| GAJA」の一族のことです。イタリア北部ピエモンテ州バルバレスコのバルバレスコ村を拠点に、5世代にわたりワイン造りを家族で続けています。
写真左から、ガイア・ガヤ(長女)、ルシア・ガヤ(妻)、ロッサーナ・ガヤ(三女)、
アンジェロ・ガヤ(本人)、ジョバンニ・ガヤ(三男)
現在はアンジェロが総監督をしつつ娘・息子たちが実際の運営を担っています。彼らのあるインタビュー記事によると、ガヤ家には「伝統を守る」・「逆張り体質(penchant for going against the grain)」の両方が共存しているようです。
例えば今やSNSと自社HPで発信することは当たり前になりつつありますが、GAJAは積極的に情報発信をしているとは言えないようです。
(ぜひHPを覗いてみてください!! [https://gaja.com] GAJAの文字と、住所・電話番号・メールアドレスしか書いてありません!!)
読み進めていくと、さらに興味深い記述が。
"My father taught me that you have to be able to think differently," says Angelo.
これはスティーブ・ジョブズの言葉ではなく、「ダルマジ」と言ったとされるアンジェロの父・ジョバンニの言葉だそう。
あれ、お父さん!もしかして、アンジェロの背中を押しましたか?
2. なぜアンジェロはネッビオーロを引き抜き、カベルネ・ソーヴィニヨンを植えたのか?
1960年代の当時、イタリアワインは、フランスワインに大きく水をあけられ、国際市場ではほとんど注目されていませんでした。ワインは日常的な飲み物として消費されることが多く、品質よりも量が重視される傾向にありました。
特に、アンジェロの故郷であるピエモンテ州では、土着品種であるネッビオーロを用いた伝統的なワイン造りが主流。地元以外にほとんど市場を持たず、ワイン価格の低下に苦しむ同業者の中には、所有する畑を手放す者もいたほど、厳しい時代でした。
そんな中でアンジェロは、「なんとかイタリアワインを国際的に通用するレベルに引き上げたい」この強い気持ちを持って走っていました。
そしてついに、「土壌がよければ、土着品種のブドウでなくても素晴らしいワインを生み出せる」という信念のもと、国際的に評価の高かった「カベルネ・ソーヴィニヨン」をバルバレスコの地で栽培し、世界に通用するワインを造ることで、イタリアワイン全体の評価を高めようと考えたのです。
1978年に植樹、その後リリースされると賛否両論はあったものの、ワイン専門誌「ガンベロ・ロッソ」では何度も最高評価を獲得しているそう。(例えるなら、ミシュランの3つ星を何度も獲得するような快挙です🛞)
アンジェロは別のインタビューで、父親について次のように語っています。
‘To him,’ smiles Gaja, ‘wine only had one colour – red – and it had to be from local grapes.’
これは別のインタビューでアンジェロが、ダルマジをはじめとした他の革新的な取り組みについてお父さんと意見が分かれていたことを話していたシーンでの言葉です。
“Think differntly”と教えたお父さんでしたが、「ワインの色は赤いこと」と「地元のブドウを使うこと」だけはどうしても譲れないことだったのです。
でもお父さんは本当に心の底から「ダルマジ」と思っていたのでしょうか?
3. 「ダルマジ」という言葉の意図を考える
ガヤ家に脈々と流れる「伝統を守る」・「逆張り体質」の精神を踏まえると、父・ジョバンニさんは本当に嘆き悲しんでいたわけではないのでは?と思えてきました。
「ここだけは譲れない」というポイントが誰しもあると思いますが、そこをつかれたことで嘆き悲しむという言葉が出たのでしょう。もし本当に嘆き悲しんでいたとしたら、お父さんの言葉を揶揄するような名前を付けるでしょうか?(私はそうは思いません。)
きっと教えを守って動いた息子の成長を嬉しく、そして誇らしく思っていることでしょう。
気づけば、ダルマジのことと、ガヤ家のことで頭がいっぱいに。半世紀の時を経ても、戦略家・アンジェロの術中にハマっているようです。
こうなったら「ダルマジ」を買ってみよう!と思って、enotecaで調べたら2019年・20年ビンテージのものは77,000円でした・・・!何か特別な機会に飲んでみたいと思います🍷
ちなみに「バルバレスコ」は、「バローロ」「ブルネッロ」に並んで、イタリア3大赤ワインと呼ばれています。ガヤのあるバルバレスコ村のワインは「純粋な果実味」を持つ傾向があり、ネイヴェ村では「スパイスのトーン」、トレイーゾ村では「ミネラル分溢れる味わい」を感じる傾向があると言われています。こちらも飲み比べワイン会必須ですね🍷
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今週のテイスティングは先週に続き名古屋のハウディさんで購入したワインです。
しっかりボディは欲しいけれど、渋すぎない方が好きという私のオーダーを汲み取って勧めてくださったワインです🍷
■今週のテイスティングレポート
カサーレ ヴェッキオ モンテプルチアーノ ダブルッツォ 2022 | ファンティー二(旧ファルネーゼ)
今回テイスティングしたのは、イタリア中部アブルッツォ州を拠点とするワイナリー「ファンティーニ(Fantini)」のワイン。「良いブドウからしか良いワインは生まれない」という信念のもと、自社畑だけでなく、地元の小規模農家と契約し、彼らが手塩にかけて育てた高品質なブドウを活用しています。国際的なコンペティションでも数々の賞を受賞しています。
今回飲むワインは、通常1本の枝に8房の実をつけるところ、4房だけに制限して栽培したブドウを使っています。このため色も濃く、香りも際立っており、味わいは驚くほど凝縮されているんだとか。
また漫画『神の雫』で「16,000円のワインに負けていない」と絶賛されたことで一躍有名になったそう。16,000円のワインの味わいがまだわからない私ですが、テイスティングしていきます!
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・外観:澄んでいて濁りのない、さらさらとした液体。濃い紫を帯びている。ダークチェリーを思わせるようなイメージ。
・香り:華やかで深みのある香り。カシス、ラズベリー、ちょっとプラムっぽさも感じる。バニラの香りもしっかりと感じた。しめじの茶色い頭の部分みたいなニュアンスも。(後から商品説明を答え合わせしたら、バニラの香りって書いてて嬉しかった。)
・味わい:強めのアタックを感じる。液体がサラサラしてたので、一気に口の中に入ってくる。残糖はほぼ感じないし、アルコール感もある。ベリーを噛んだ後に残るようなキュッとした酸味と、オレンジを食べた後のようなほのかな柑橘の甘さも残るのも面白い。カカオ90%以上のチョコを食べた後のような感覚も残ってて、後味がとても楽しいワイン。
・価格:3,080円(税込)/750ml
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それではまた来週もお会いしましょう!Ciao!!