ウルグアイに2週間滞在したあとは、イギリスにやってきました🇬🇧
「もしかしてイタリアの前に、イギリスを忘れてたの?」と思ったのではないでしょうか。
実は教本では「英国(えいこく)」とされていたので、このようなことになりました。
- 余談-
「英国」と呼ぶのは韓国や中国も同じ。「英」はイギリスを成す4つの構成国の中の「England | イングランド」を指しています。イギリス全体の政治・経済・文化の中心的な役割を果たしてきたことから、こう呼ばれています。
一方で、西洋諸国では「United Kingdom(UK)」や「Great Britain」などが主流であり、「England」という呼び方は構成国の一つを指すものとして区別されているようです。
脱線してしまいました。
気を取り直して、今日はイギリスについて深掘りしていきます。
地域的にはヨーロッパに位置するので、なんとなくワインが盛んな気もする。でも実際にイギリスのワインと言われてもなかなかピンとこない。
フランスやイタリアが1番手のグループだとすると、次のグループくらいの生産量かな?と思ったところ、ヨーロッパ全体で見ると非常に小規模で、主要なワイン生産国と比べると下位に位置する、とのことでした。(具体的な順位は不明)
なぜワインの生産がそれほど盛んではないんだろう?
まず思ったのが気候の問題。イギリスは曇りと雨が多くて寒そうなイメージ。晴れが多くて温かい気候!というイメージはあまりありません。ある程度の日射量が必要そうな黒ブドウは育ちにくそうな気がしますが、白ブドウであれば育つのではないか?
そう思い調べてみると、全体としてブドウが成長するのに必要な日照時間や温度などが十分ではないことが、長年ワイン生産の障壁となっていたようです。ただ興味深いことに、白ブドウと黒ブドウの栽培割合は、50:50でした。意外!
ブドウ栽培には、温度・湿度・土壌・そして日照時間が鍵です。イギリス南部は特定のブドウ品種にとって、これらの条件をうまく満たしてくれる環境なんです。
なんとイギリス南部はイギリス全体の約83%ものブドウの栽培面積を占めるそう!ワインの生産量も75%以上を占める、まさにイギリスワインのメッカと言えるでしょう。
〈南部以外の地域のワイン事情〉
南部以外では、イングランド北部のヨークシャー、ウェールズ、そしてスコットランドなどでブドウが栽培されています。
気温が低く、成長期に必要な気温(17~27℃)を割ってしまいます。また日照時間も短い。よって光合成がうまく進まず、糖分(主にグルコースとフルクトース)の蓄積が十分でないのです。リンゴ酸の分解もされにくいので、酸味が強く糖度とのバランスが悪くなります。
降雨量も比較的多いので、カビのリスクもある。
先週勉強した「ユニ・ブラン」(糖分が低くて、酸味が強く、病害にも強い)がぴったりなのでは?と思いましたが、答えはNO。特性だけ見ると理想的に思えますが、「ユニ・ブラン」自体が温暖で十分な日射量がある地域で育つ品種なので、イギリスの冷涼な気候下では栽培されていないのです。(*詳しくは、おはようびわ湖vol.118をcheckしてみて🔍)
ちなみにイギリスの蒸留酒といえば、ウィスキー。ブランデーの文化はそこまで主流ではないことも影響しているのかもしれませんね。
北部で育っているブドウは、これまでの勉強では聞いたことのない新しい品種だらけ。白ブドウだと「セイヴァル・ブラン」、「バッカス」。赤ブドウだと「ロンド」、「ピノ・ノワール」(これは知ってた!)。聞いたことがないということは、イギリス原産なのかな?と思いましたが、イギリスには原産ブドウが存在しないんだとか!確かにこの気候で、ブドウが1から生まれてくるのは考えにくいのかもしれません。
イギリスはオールドワールド?ニューワールド?
ドイツやフランス原産のものが多く持ち込まれているということは、「ニューワールド」に分類されるのか、と思いきや分類は「オールドワールド」!地域的にヨーロッパに分類されるらしい。
イギリスのStanlake Park Wineというワイナリーは、イギリスもオールドワールドだということを忘れないで!という記述をしていました。もしかしたら私のように、ニューワールドと勘違いする人が多いのかもしれません!(ワインの勉強をしたことがある人は一度は思ったのではないでしょうか?)
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These are all traditional wine making countries so it’s easy to think of them as old wine producers, but do not forget, that the UK is also Old World: something to remember when you’re sipping a Pinot Noir, Meunier, and/or Chardonnay based English Sparkling Wine.
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引用元:NEW WORLD VS OLD WORLD WINES: A COMPARISON
この文章では、「English Sparkling Wine」という記述が強調されていますね。イギリスではスパークリングワインが盛んなのかと思い、調べてみるとビンゴ。
なんとイギリスのワイン生産量のうち、スパークリングワインが約8割、スティルワインが約2割という驚きの比率。これは他の国と比べるとかなり特徴的なんです。例えば:
・イギリス:スパークリング8:スティル2
・イタリア・フランス:スパークリング1:スティル9
・オーストラリア:スパークリング1:スティル24
世界的に見ても、スパークリングワインの比率がこれほど高い国は珍しいと言えそうです。
またおもしろかったのが色別の内訳。白ワイン:赤ワイン:ロゼワインで、6:2:2なのですが、ブドウの栽培面積は、50:50と紹介していました。このズレの秘密は、黒ブドウを白のスパークリングワインに使っているところにありました。イギリスだけの特色かと思いましたが、実際はフランスやドイツ、イタリア、スペイン、アメリカなどでも例があるようです。(フランス・シャンパーニュ地方では伝統的にシャルドネ(白ブドウ)、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ(黒ブドウ)の3品種が使用されています!)
これは寒い地域の特徴で、「黒ブドウと白ブドウがお互いをサポートしあう」という考え方です。黒ブドウの糖度や味の厚み(ボディ)面でのサポートや、白ブドウが不作の場合の量の面でのサポート、そして逆に赤ワイン用としては不完全な成熟だった場合の使い道となっているのです。
スパークリングワインが盛んなイギリス。いったいなぜこれほどまでにスパークリングワインの生産が盛んなのでしょうか?
イギリスのスパークリングワイン事情
ミードでは、スパークリングタイプのものは東南アジアやインドなど温暖な地域では盛んに製造されています。暑い場所では炭酸が入っていた方が清涼感を感じて飲みやすいから、と想像がつきます。
イギリスは寒いのになぜスパークリングワインが盛んなのでしょうか?育つブドウがスパークリングワインに向いている、すぐに思いついた理由はこれです。
ではスパークリングワインに向いているブドウとはどんな特徴なのでしょうか?また、スパークリングワインのガスの正体は、添加されるものなのか?それとも瓶内二次発酵なのか?
まだまだ掘りたいところは尽きませんが、今回はここで終わり。来週はイギリスのスパークリングワイン事情、そしてイギリスのブドウ栽培面積の83%を占めている南部がワインづくり成功している理由は何なのか?深掘りしていきたいと思います!お楽しみに。See you next week!