イタリアで6週間過ごした後、今日からはウルグアイ編に突入します🇺🇾
「ここ、ウルグアイ」と話す、ゴー☆ジャスさんの動画を先週末に初めて見て、なんだかウルグアイに呼ばれている気がしたのです。
・・・
南アメリカ地域で2番目に小さい国、でも4番目にワインの生産量が多いウルグアイ。そんなウルグアイを代表するブドウってなんだろう?
その名は「Tannat | タナ」。フランス南西部の「マディラン」という土地原産の黒ブドウ品種で、19世紀にバスク系移民(スペインとフランスの国境にまたがる地域に住む人々)によってウルグアイにもたらされました。
同じくフランス原産の「マルベック」がアルゼンチンで成功したように、タナもウルグアイの気候と土壌によく適応し、現在では作付面積の約27%を占める国民的品種となっています。
—
・マルベック(22.39%)at アルゼンチン
・ソーヴィニヨン・ブラン(66%!)at ニュージーランド
・メルロー(11.5%)at フランス
・シュナン・ブラン(18.4%)at 南アフリカ
・巨峰(29%)at 日本
—
ニュージーランドは外れ値として、こう見ると、27%は割と大きい数字のようです。(日本で29%の面積がある巨峰はほぼ生食用!ワインの歴史がまだ短いことが伺えます。)
ウルグアイのワイン界の重鎮、タナ。「日焼けのように色づいた」という意味の“Tanat”に由来していると言われ、濃い果粒の色合いと高いタンニン濃度が特徴。
アルゼンチンのマルベックも同じ特徴を持っており、かつ隣の国なので気候特性や土壌、ワインにした時の味わいは似ているんだろうな、と思い調べたら異なる点がたくさんあったのでご紹介します✍️
タナ vs マルベック:南米で花開いた2つのフランス原産ブドウの違いとは?
1. 気候と土壌が生む個性の違い
タナが育つウルグアイとマルベックが育つアルゼンチン。隣り合う国でありながら、その気候と土壌条件は対照的です。
ウルグアイで育つタナは、海洋性気候の中で栽培されます。この地域では年間降雨量が1,000〜1,300mmと多く(アルゼンチンは240~500mm)、湿潤な環境が特徴です。ほとんどが低地(標高100m以下)で栽培され、昼夜の温度差は比較的小さく、ブドウの糖度はゆっくり上昇します。水分保持力がある粘土質と、石灰質土壌が混ざったところで育つため、水分不足のストレスがありません。
一方、アルゼンチンで育つマルベックは対照的。乾燥した大陸性気候の中で栽培されます。メンドーサなど標高800~1,500mの高地で栽培され、昼夜の温度差は大きく、日中の強烈な日差しによって糖度が急速に上昇します。排水性が良い砂利質と、石灰質土壌が混ざったところで育ち、適度な水分不足ストレスがあります。
両方とも石灰質土壌だから同じじゃない?と思いましたが、ウルグアイでは粘土質、アルゼンチンでは砂利質の影響を受けた石灰質土壌なので、水はけが変わるのです。
育ってきた環境が違う2人は、ワインになった時も異なる表情を見せます。
2. 育ってきた環境が及ぼす味わいの違い
両者ともタンニンがしっかり含まれていることは同じですが、タナは酸味がしっかり保持されており、マルベックは豊かな果実味が特徴と言われています。
なぜこのような違いが生まれるのか?
- 酸味の観点(タナ>マルベックの理由)
これは、気温と気温の影響を受けるリンゴ酸が関係しています。
リンゴ酸は、ブドウ内で呼吸作用(代謝プロセス)の一環として分解されます。このプロセスは高温の中だと加速します。(暑い中でマラソンをしたら、カロリーをたくさん使うそんなイメージでしょうか。)アルゼンチンの日中は30~35℃程度である一方、ウルグアイは28~29℃程度。この気温差によって、ウルグアイではリンゴ酸の消耗速度が緩やかになり、その結果として酸味がしっかり保持されます。
ウルグアイは夜間も涼しく(15~18℃)、この低温環境下では呼吸作用が抑制されるため、リンゴ酸の消耗がさらに抑えられます。一方でアルゼンチンでも夜間は涼しいものの、日中の高温によるリンゴ酸消耗速度が優勢となり、結果として果実内の酸味は失われやすくなります。
- 果実味の観点①(マルベック>タナの理由)
1つには、土壌の特性が関係しています。
マルベックが育つのは水捌けの良い土壌。ブドウの根には水分センサー(植物ホルモンであるアブシジン酸など)があるようで、乾燥を感知すると水分を探して成長するんだとか。水捌けの良い土壌では、層に水分が保持されにくいので、ブドウの根は地下へ地下へと水分を求めて伸びていきます。(排水性が良いと、水分が重力によって下層に移動するので、それに追随して深く成長するとも言える)
その結果、地下に溜まったミネラル資源がブドウに吸収され、複雑で凝縮感ある果実味を生むんです。これはミネラル自体が直接風味を生むわけではなく、ブドウ樹の代謝プロセスをサポートするということです。
例えばカリウムは光合成や酵素の活性を促進します。また鉄、マグネシウムはクロロフィルム生成(植物が光合成を行うために必要な色素)や光合成の活性に寄与するため、これも糖分の生成を促進します。糖度が高まることで、ワインにした時に、プラムやブルーベリーなど黒系果実由来の甘みや凝縮感が加わるのです。
- 果実味の観点②(マルベック>タナの理由)
もう1つには、湿度が関係しています。
乾燥した地域で育つと、水分供給が少なくなり、そのことで果粒の成長が抑制され、結果果粒は小さくなります。さらにマルベックは果皮も厚いので、果皮(ポリフェノールやアントシアニンが豊富)と果汁の比率が高くなることから、結果として濃厚で凝縮感のある風味が生まれやすくなります。
3. まとめ - 見えているところだけで判断しない
人は見た目が9割といいますが、実際はその人を深く知るとまた違った一面が見えてきますよね。ワインも同じく、見た目だけで判断してはいけない。育ってきた環境やその人が今置かれている環境を探ると想像もつかなかった事実が垣間見えます。
ワインの勉強を通して、人生における大事なことを学んだ今回でした。
タナの赤ワインを飲みたかったのですが、どうしても手に入らずそれはまた次回に。イタリア回で「クラシッコ」を教えてくれた、愛と冒険の酒屋「ハウディ」さんにて購入したウルグアイの新進気鋭のワイナリーのワインを飲んでみました!
■今週のテイスティングレポート
Nakcool vino Bianco 23 | Proyecto Nakkal Wines(プロジェクト・ナッカル)
2020年、ウルグアイの若手ワインメーカー二人が立ち上げた自然派ワイナリー「Proyect Nakkal Wines | プロジェクト・ナッカル」。大学で共にワイン学を学んだ二人は、ナチュラルなワイン造りへの想いから小規模なプロジェクトを開始。当初3000本だった生産量は現在3万本まで成長し、輸出が少ない(国内消費が95%)ウルグアイワインの中では珍しく、世界各国で高い評価を得ています。
名前の由来は、ギリシャ神話のアトランティスの守護者「ナッカル」。「物事を成り行きに任せる」哲学を大事にし、人の介入を最小限にしたワイン造りをしています。「ブドウがなりたいワインを造る」。これが彼らの信条です。野生酵母での醗酵、清澄剤やフィルター不使用など、シンプルな醸造で、ブドウ本来の個性を引き出しています。
メルロー 80%/ミュスカ・オットネル 20%
===
・外観:やや濁ってて、もやがかかっている。くすんだ薄紫色で、粘性はやや強め(体感今までのワインよりも、ワインの線ができるのが遅かった。
・香り:複雑な香り。ペンキっぽさ、ホームセンターの木材コーナーみたいな香りを感じる。舞茸、杉、針葉樹、動物的なニュアンスも。
・味わい:アタックはやや強め、甘さはほぼなくドライ。酸味はあんまり感じない。口当たりはなめらか。渋みもほんのりあるけれど液体の滑らかさがしっかり口の中を包んでくれる。アルコール感も余韻もあまり感じない。
・合わせてみたいお料理:ジビエ料理やジンギスカンとの相性が良さそう。ウルグアイではワインの国内消費が95%と高いのですがその理由はウルグアイのお肉料理との相性が良いことだそう。再現できるか少し不安ですが、次週実際に試してみたいと思います!
・価格:2,640円(税込)/750ml
—